2023.03.16
# 民俗学 # 日本史

アマビエ? アマビコ? コロナ禍に話題をさらった予言獣、その本当の名前を探る

コロナ禍に話題になったアマビエは、幻獣のなかでも「予言獣」に含まれる。ここでは、歴史史料を頼りに、その正しい呼び方、由来を探る(以下では、『日本幻獣図説』(湯本豪一著)を参照する)。

アマビエの登場

〈京都大学附属図書館に一枚の瓦版が所蔵されている。下記の図版は、1960年に刊行された小野秀雄の『かわら版物語』にも紹介されているので以前から知られていたが、その後、妖怪をテーマとした展覧会が全国各地で開かれるようになって出陳され、多くの目にふれられるようになってきた資料だ。

『肥後国海中の怪(アマビエの図)』(京都大学附属図書館所蔵)
 

左に波間から出現した髪の長い得体の知れないものが描かれ、右には「肥後国海中へ毎夜光物出る所の役人行見るに図の如の者現す 私は海中に住アマビエと申者也 当年より六カ年の間諸国豊作也 併病流行早々私し写し人々に見せ候得 と申て海中へ入けり 右は写し役人より江戸へ申来る写也 弘化三年四月中旬」と記されている。〉

肥後(熊本県)の海に毎夜光るものが現れるという。
役人が見に行くと、図のようなものが現れた。
「私は海中に住むアマビエと申す者だ。
今年から6年間は諸国で豊作が続くが、病が流行する。
早々に私の姿を写して人々に見せなさい」
と言って海中に消え去ったという。
右の図は役人が写して江戸に伝えたものだ。
 弘化3年(1846)4月中旬

〈肥後(熊本県)の海中から出現したアマビエなる幻獣で、豊作と疫病流行を予言し、自分(アマビエ)の姿を描き写して人々に見せろと言い残して海中に姿を消したというものである。関連資料が発見されなかったこともあり、この瓦版が紹介されるときは、書かれてある内容と描かれた幻獣がアマビエだということくらいしか解説がなされなかった。肝心のアマビエとはいかなる幻獣なのかといったことに言及されることはなかった。

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