アンコンシャスバイアスとは、誰もが知らず知らずのうちに持ってしまっている“無意識の思い込み”のこと。それによって、思わぬところで誰かを傷つけたり、自分自身を苦しめている可能性があります。思い込みを手放すためにできることとは? 専門家の守屋さんにアンコンシャスバイアスとの向き合い方を聞きました。
アンコンシャスバイアスは誰しも必ず持っているもの

私たちの価値観は、日々さまざまなものに影響を受けてできあがっている。中には、気づかぬうちに受け取った情報や価値観であるにもかかわらず、あたかも真実であるかのように認識している考えもあるだろう。美容においては例えば、「シワやシミのない肌のほうが美しい」「白髪は老けて見える」といった考え。こうした価値観を一概に悪いとは言えないが、シワやシミがあっても美しい肌はあるし、グレイヘアを楽しみながらはつらつと過ごしている人はたくさんいる。そう気づくだけで視野が広くなり、ふっと心が軽くなったように感じる人も多いのではないか。
「アンコンシャスバイアス=無意識の思い込みを手放せば、世界は今までとは違う輝きを放ち始めます」
そう話してくれたのは、「アンコンシャスバイアス研究所」を立ち上げ、企業や学校で学びの場をつくっている守屋智敬さん。アンコンシャスバイアスを“アンコン”と略し、より気軽に、自分の思い込みを振り返る習慣を持つことを勧めている。
アンコンシャスバイアスという概念が知られるようになったのは2013年頃。グーグルが社内でアンコンシャスバイアス・トレーニングを始めたことがきっかけだという。
「私たちの日常には、さまざまなアンコンシャスバイアスが潜んでいます。“この仕事は女性に向いていない”“男性は出世を目指すもの”といったジェンダーバイアスが根強いこともある。私の講座では、知る、気づく、対処する、向き合い続ける、という4つのステップを示しながら、アンコンを上書きする方法を伝えています」
まず重要なのは、正しく知ること。無意識の思い込みは「誰にでも、無数にあるもの」と守屋さんは繰り返す。
「誰もが持っているものだと知ることで、自分の中にあるアンコンシャスバイアスを素直に受け止めることができる。アンコンを持っていたと認めることができて初めて、その影響にも気づくことができると思います」

無意識の思い込みは、他人を傷つけてしまう可能性がある。3つ目のステップ「対処する」の基本は、言動に気をつけること。
「たとえ自分が褒め言葉だと思っていても、そうは受け取らない人がいるかもしれない。100人が喜んでも、101人目の人は喜ばないかもしれない。そこに思いを巡らせることが求められています」
講座でこうした話をすると、怖くて人に話しかけられなくなる、と漏らす人もいるという。だが「対話して初めて分かることがある」と守屋さん。
「例えば、一見怖そうに見えた人が、話しかけてみると優しかった、といったような経験はありませんか? そんな風に対話によってアンコンが上書きされることがある。失敗することや不用意に傷つけてしまうこともあるかもしれませんが、他者と関わること、他者の意見を聞いたり、価値観に触れながら、自分のアンコンと向き合い続けることが大切なのだと思います」