新年度を間近に控えた今、入園先は決まりホッとしたのもつかの間、新生活の準備に追われている保護者も少なくない。そんな中、園バス置き去り事故や、園内虐待事件など、保育に関する悲しいニュースが近年あとを絶たず、不安を抱える親たちも多いのではないだろうか。

1回目の記事【2000人の親に聞いた「保活」の疑問――危ない保育園の実態とは】では「保活」の最新事情と、危ない保育園の見分け方を徹底解説したが、2回目は「教育熱心な家庭が陥りがちな偏った園選び」をはじめ、“本来の保育のありかた”について、Yahoo!ニュースの個人オーサーでもあり、保育の実情について詳しいジャーナリストで、現在は幼稚園・保育園の副園長もしている猪熊弘子さんに取材。保活、そして保育の本質とは――。

習い事がある園、魅力的に見えるけれど

近年は認可保育園、認可外保育園、幼稚園(こども園)問わず、園独自のカリキュラムに力を入れる園が増えている。現在、保育園に子どもを通わせている保護者にとったアンケートの設問【Q:現在お子さんが通っている保育園に満足していますか?】に対しては、実に84%の保護者が「はい」と答えた。

『現在お子さんが通っている保育園に満足していますか?』Yahoo!ニュースを通じて実施したアンケート

この“満足”には、様々な理由があげられるが、保育現場の実情に詳しいジャーナリストの猪熊さんは、一部の“教育熱心な保護者”の保育への考え方に警鐘を鳴らす。

「最近流行っているのは、認可保育所よりも高い保育料をとり、園に通う時間内に英語や運動、知育授業などができることをうたう認可外保育園。“バイリンガル”“〇〇式”“お受験対応”など、教育熱心な保護者にとっては、魅力的に思えるカリキュラムが揃っています。しかし、そういった園に通えば子どもが幼いうちから色々と習得してくるだろうと考えていたら、それは幻想だとお伝えしたいです。

 

習い事的な要素を園がおこなってくれるのを喜んでいるのは保護者。子ども自身は、園生活のペースに慣れるとは思いますが、体力的には疲れ切っていたり、子ども自身が楽しんでいなかったり、という構図もみられます。教育熱心な家庭では帰宅後さらに、お受験塾や他習い事を詰め込んでいるケースもあります。このような状態で子どもは心身ともに健やかに成長できるでしょうか? 

Photo by iStock

『普通の認可保育園は無駄に時間を過ごしているだけ』という経営者の考えも耳にしたことがあります。園で様々な習い事の要素を取り入れることで保育の時間がより有意義になる、というようなことでした。もちろん、お金をかけて子どもに習い事をさせることは個人の自由です。しかし間違えてはいけないのは“保育の本質”です。保育は習い事ではない、ということです。本来、習い事は親が子どもに付き添い、共に歩むことで、はじめて身につくもの。何でもかんでも詰め込めば良いものではなく、逆に詰め込み過ぎてのんびりする時間を奪ってしまったら、子どもが育つ環境としては問題があります。子どもにはのんびり、ぼんやりする時間が大切。親の願いだけで、習い事の時間を休みなく子どもに与え過ぎることに、私は疑問を感じています。」