子どもの10人に1人は何らかの障害を抱えている…医療漫画『リエゾン』が描き出す現代日本の「痛み」
「大人の発達障害」という言葉が、社会に浸透し始めて久しい。厚生労働省の2016年の調査によると、発達障害と診断された人は推計48万人以上にのぼる。また、2022年12月、文部科学省は「通常学級に在籍する公立小中学生の8.8%に発達障害の可能性がある」という調査結果を発表したことも記憶に新しいことだろう。診断を受けないまま成長した「大人の発達障害」も含めれば、実態はこうした数字よりも上回ることが予想される。
そんな中で「大人の発達障害」を抱えながらも、児童精神科医として賢明に患者と向き合う女性医師を主人公にしたマンガがある。週刊モーニングで連載中の『リエゾンーこどものこころ診療所ー』(原作・漫画/ヨンチャン 原作/竹村優作)だ。俳優の山崎育三郎さんが主演を務めるテレビ朝日系同名ドラマは3月10日にいよいよ最終回を迎える。本記事では、マンガ『リエゾン』のレビュー記事をお届けする。ドラマに興味を持たれた方は、ぜひ原作にもふれてみてほしい。
集団生活の生きづらさ
集団の中でうまく暮らせない生きづらさ。自分の生きづらさだけではなく、友だちについても「あの子、生きづらそうだなぁ」と感じたことがある。
生きづらさとはなんだろう。どうして生きにくいのだろう。自分が悪いのか、環境が悪いのか、誰かが悪いのか。小さな頃、教室の隅でいつもそんなことを考えていました。
近年メディアで目にしない日はないくらい、度々話題に出る「発達障害」。統計的に日本国内でも診断されている人は48万に上るという。子どもの場合10人にひとりの割合なので、40名ほどいるクラスだと発達障害の子がうち2~3人いてもおかしくないそうです。

エジソンやビル・ゲイツなど著名人にも発達障害の人は多く、何かに夢中になったり、好きなことにのめり込み過ぎたり。ひとりで黙々と打ち込める環境がある場合は、何かに秀でた人になる反面、集団でのコミュニケーションにおいては、意思疎通がうまくいかずにトラブルを起こすこともあります。

「発達障害」と一口に言っても症状はさまざまで、いくつかのタイプに分類されます。「自閉症スペクトラム障害」「アスペルガー症候群」「注意欠如多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」などがあります。他にもたくさんの症状があり、どれも病気ではなく、その人の特性や気質のようなもので、個人差や環境の影響、年齢、コミュニティとの相性があります。「個性」に近いかもしれません。得意なことと苦手なことが個性として強く出ていることが多いです。
テレビやラジオのニュース、インターネット、書籍などで、発達障害に関するたくさんの情報が出てきています。だから、「私はもしかしたら?」「自分の子どもは当てはまるかも」など、性格や個性と長年曖昧になっていた部分が、一般にも少しずつ認知されてきました。
その「発達障害」をわかりやすく描いた漫画が、今作の『リエゾン こどものこころ診療所』です。児童精神科医が物語の軸になっています。