中高年こそ「筋トレ」が必要だ…専門家が指摘する、“中高年の体”で起きている驚きの「変化」
「最近、血圧が高くなってきた」「運動しても昔みたいに痩せない」——体調や体型に悩みを抱える中高年は実に多い。かつてのような健康で若々しい体を手に入れるにはどうすれば良いのだろうか。
そんな疑問に答えてくれる1冊が『50歳からの科学的「筋肉トレーニング」』だ。中高年の体の中で起こっている変化などを解説し、科学的な根拠に基づいたトレーニング方法を一挙紹介している。本稿では、そんな“中高年必携”の1冊の中から、中高年になると若い頃と筋肉の付き方が変わるのはなぜか、その科学的な背景に迫った部分を特別に抜粋してお届けする。
(※本稿はフィンク・ジュリウス『50歳からの科学的「筋肉トレーニング」』を一部再編集の上、紹介しています)
「ホルモン低下」で筋肉が膨らまない!?
同じトレーニングをしても、若者と中高年では筋肉の付き方が違います。なぜでしょうか? 一言で言えば、ホルモンの違いです。同じトレーニングをして同じものを食べても、若者と中高年では筋肉の付き方が違うのは、中高年は様々なホルモンが低下していくからです。

どのようなホルモンが低下するかというと、いわゆる「アナボリック・ホルモン」と言われる一群のホルモンで、テストステロン(男性ホルモン)、成長ホルモン、IGF-1(インスリン様成長因子:成長ホルモンとともに成長を促進する働きを持つ)などです。
アナボリック・ホルモンは「タンパク質同化ホルモン」とも呼ばれ、タンパク質の合成を促進したり、タンパク質の分解を抑制したり、タンパク質のもととなる窒素の蓄積を促進したりするホルモンの総称です。一言でいえば筋肉を増やすために働くホルモンです。「同化」は「作る」と同じ意味と思ってください。
これらタンパク質を作るために必要なアナボリック・ホルモンが、中高年になると低下してしまうのです。たとえるとしたら、パンを作る時に酵母が少ないと、いくら練っても、水や小麦を足してもパンはほとんど膨らみません。酵母が多ければ、膨らみが良くなります。
アナボリック・ホルモンは、筋肉において酵母のような働きをすると考えてください。いくらトレーニングしても、いくらタンパク質を摂っても、アナボリック・ホルモンが少ないと筋肉は膨らみません。
若い頃はアナボリック・ホルモンが体中に充満しているので、どんなものを食べても、どんなトレーニングをしても筋肉は付きます。それはアナボリック・ホルモンが代謝機能を良くし、筋肥大メカニズムに必要なキナーゼ(細胞を活性化させる酵素)とサテライト細胞(筋肉になる前の細胞。活性化されて筋肉になる)を活性化するからです。
アナボリック・ホルモンは、トレーニングと食事に対する体の反応を決定します。ですから、いくらトレーニングしてもアナボリック・ホルモンの量が少なければ、体は少ないなりの反応しかしないので、大部分のトレーニングは無駄になってしまいます。したがって中高年になってアナボリック・ホルモンが減少したら、若い頃と同様に「トレーニングはハードにすればするほど良い」というわけではなくなるのです。