「外はトロトロ、中はガチガチ」…地球の中心「コア」の構造が想像を超えた「不思議さ」だった
2003年に公開された『ザ・コア』というSFパニック映画をご存じでしょうか? 主演がアーロン・エッカート(『ダークナイト』でハービー・デント/トゥーフェイスを演じた、ケツ顎が印象的な俳優)とヒラリー・スワンク(2度のアカデミー主演女優賞の受賞歴がある、名優)の2人で、なかなか豪華なキャスティングでした。楽しい作品ですが、科学考証がかなりアレなため、ブルーバックス的にはおススメしていいものか悩ましい……。
この映画のタイトルにある「コア」とは、地球の中心に現実にある「鉄球」の名前です。コアの半径は約3500kmと知られています。ちなみに、月の半径がおよそ1700km。地球の中に月よりもはるかに大きな鉄球があると聞くと、なんだか不思議な感じがしないでしょうか。
コアが存在することは間違いないのですが、わかっていることは多くありません。謎の宝庫であり、地球科学者にとっては興味の尽きない存在です。今回はこの謎だらけの鉄のかたまりに注目してみましょう。
*本記事は『地球の中身——何があるのか、何が起きているのか』(講談社ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
地球の中心には何がある?
半径約6400kmの地球の中身は地殻・マントル・コアの3層に分けられる。地殻は地表を覆う薄い岩石層、マントルは地殻の下から深さ約2900kmまでを占めるぶ厚い岩石層だ。
マントルの下のコア(核)は金属鉄のかたまりである。その形はほぼ球体で、半径は約3500km。地球半径の55%ほどだ。
コアについて調べるとき、まずは地震波が頼りになる。コアを通って地表に届いた地震波をたくさん観測・解析することで、理解が進んできた。
コアには層構造があることがわかっている。外側の層が外核で、その内側は内核と呼ばれる。内核が発見されたのはわりと最近のこと(1936年)だ。当時太陽系のもっとも外側の惑星とされた冥王星が発見されたのがその6年前であったため、「地球の中心は太陽の果てよりも遠い」といわれることがある。
地球中心を占める内核の半径は約1200km。半径で比較すれば、コア全体の3分の1程度、地球全体の5分の1ほどだ(図1)。

図1のような地球の断面図では、内核はそれなりに存在感があるが、体積割合にすると、コア全体のわずか4%しかない(地球全体の1%に満たない)。この数字を知ると、内核が発見しにくかったのも仕方がない気もしてくる。