地球は「ゆで卵」というより「玉ねぎ」…「地球の声」を聞いて分かった「意外な地球の中身」
地震のしくみを説明する図として、日本列島の下に太平洋プレートが沈み込む様子を描いた、地球の断面図を見たことがないでしょうか。東側から移動してきた海のプレートが日本列島をふくむ大陸のプレートにぶつかり、斜めに沈み込んでいく様子が、もっともらしく表現されています。
地球全体をまっぷたつにした断面図も、見たことがある人は多いと思います。たいてい地殻・マントル・外核・内核という層構造が表現されています。
しかし、誰もまっぷたつの地球など見たことがないはずです。沈み込んだプレートだって、断面として見ることはできません。
地球科学者はどのようにして「地球の中身」を理解してきたのでしょうか? このたび『地球の中身——何があるのか、何が起きているのか』を上梓した、廣瀬敬氏に解説していただきます。

見えない領域
「地球の中心は太陽系の果てよりも遠い」と言われることがある。
たとえば、かつて太陽系のもっとも外側の惑星とされた冥王星は、太陽からおよそ59億kmも離れていて、これは地球と太陽の距離(=1AU=約1億5000万km)の約40倍に相当する。いっぽう、地球の表面から中心までの距離(つまり地球の半径)は約6400km。比べるのがばかばかしいほど、冥王星は遠い。
では、冒頭に紹介した言葉はどういう意味だろう。それは観測・アクセスのしやすさを比較した言い回しだ。
冥王星は、1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボーにより発見された。いっぽう、地球の中心部に固体の金属でできた構造、内核が発見されたのは1936年――デンマークの地震学者、インゲ・レーマンの功績である。つまり、内核は冥王星よりも見つけにくかったのだ。
また、NASAが2006年に打ち上げた探査機ニュー・ホライズンズが冥王星に接近し、その表面の様子の観測に成功した。その観測から、冥王星ではいまも地質活動が起きている(氷の湧き上がる場所があり、表面を覆う氷が移動している)ことが明らかになった。なお、ニュー・ホライズンズはさらに太陽・地球から遠ざかり、太陽系外縁部の観測を続けている。
探査機が太陽系を飛び出す時代になっても、地球内部に探査機を送り込むことはできていない。それどころか、人類が掘ったもっとも深い穴の深さはたった12km――地球の半径のわずか0.2%だ。地球中心の内核に探査機を送り込むなど、SFでしか実現できないだろう。もちろん、内核で起きている活動の直接観測も不可能だ。