2023.03.19

上方落語の伝説・桂米朝は友の訃報を聞いて「サイコロステーキ」を注文した意外すぎる理由

人生を変える365日の名言

最近のテレビにあふれる関西弁とは一線を画す、品のある上方言葉。伝統芸能への深い研究心。演芸人として史上初めて文化勲章を受章した桂米朝(三代目)は、まさに落語界のレジェンドだ。

芸が見事なのはいうまでもない。

なんといっても生き様が洒落ている。そんなエピソードの一つを紹介しよう。

大阪ホテルプラザのダイニングバーで弟子たちと食事をしているときに、盟友の桂米之助の訃報が届いた。

かけつけたマネージャーの報告に「えっ……」と呟き、しばらく沈黙する米朝。

だがおもむろにウェイターを呼んで、「サイコロステーキ、くれる?」と注文した。

 

同席していた弟子たちはあっけにとられ、顔を見合わせたという。

落語作家の小佐田定雄が語る。

「決して薄情なわけではありません。兄弟子の死は誰よりも悲しい。

でも『いくら悲しんだところで、次の日は飯食いまっしゃろ』ということなんです。

父上や師匠を若くして亡くしていることで、どこか死に対して達観していたところもありました」

米朝は「洒落ている」という言い回しを好んだ。

落語は話がどれほど深刻な状況でもサゲがポンとつけばそれで終わり。

悲しみを笑いに変えてこその芸である。

もっとも、周りがその真意を探ろうとすればするほど、本人は「ステーキ食いたかっただけや」と言って笑うだろう。

笑いと悲しみはいつも背中合わせだ。

昭和・平成・令和。読めば時代がよみがえり、きっと心が熱くなる珠玉の名言を集めた『日めくり一日一語 あの人の声が聞こえる 人生が変わる365日の名言』(週刊現代編集部・編)が好評発売中です。俳優、歌手、政治家、作家、スポーツ選手。日本を代表する有名人たちの心動かすことばが少しずつ頼める「宝石箱」のような一冊です。

〈前書きより〉

本書は、『週刊現代』に掲載された多くの方々のインタビューや特集記事から、印象的な言葉を選りすぐった、日めくりの名言集です。

名言といっても、古典的な格言集に出てくるような大仰な言葉ばかりではありません。なかには「ボケ、ヘタクソ」「黙って食え」など、いったいどこが名言なんだと戸惑われるような言葉もふくまれています。

しかし、それらの言葉は誰かが発したものです。それも芸能や芸術、スポーツ、政治や経済の世界で誰もが目を見張るような活躍をした人たちの言葉です。

それらの言葉の向こう側には、人生があります。

そして、努力や成功、喜びや悲しみ、悔しさ、愛情、無常感といった人生を構成する大切なものが渦巻いている。

どんな言葉も、それ自体ではたいした意味は持ちません。言葉を発した人の経験と生き様があって初めて輝くのです。

この本をめくれば、たくさんの人々の生き様のエッセンスを「つまみ食い」することができます。

一日にひとり、ひとこと――365日、つまみ食いを続けたあかつきには、きっとあなたの人生が美しく素敵な色合いに変わっていることでしょう。

SPONSORED