コロナの感染拡大防止のため、突然の休校になったのは約3年前。厚生労働省は、マスクについて、「3月13日以降、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることになります。本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします」と呼びかける。
ジャーナリストのなかのかおりさんが保護者や子どもたちに取材した前編では「外すのが恥ずかしい」「マスクしないと怒られるから怖い」という子どもの声を紹介した。単純にはいかないようだ。一方で「言葉の発達に影響するのではないか」という、親の意見もある。この3年、多様な価値観が認められるようになったとはいえ、子育て家庭の手探りや戸惑いが続く。後編では、休校から3年の混乱の軌跡を振り返る。

マスク生活、口元が見えないことの不安
看護師のDさんは、3月からのマスク外しについて、小学生の娘に聞いてみた。「マスクする、だってコロナにかかりたくないもん」と言われた。なるべく本人の意見を尊重したいと思っている。だが、幼稚園に通う次男のことでは、気持ちが揺れる。
「3歳ぐらいの子は、まだ口元を見て話し方を覚えるっていうし、サ行がうまく発語できずに会話していて、言葉の発達が、マスクなしの上の子たちよりは遅いと感じます。マスクを外せば、効果は一番、あるのかなって思います。

あんなに小さい子のマスク生活を変えてあげたいけれど、1歳になってすぐコロナ禍になってしまい、ずっと外ではマスク生活だから、意外とマスクは外したがらないかもしれませんね。うーん、やっぱり、しばらくは、マスクをさせようと思います。夫も医療関係者で、他の家庭よりリスクは低くしないといけないので」
Cさんによると、コロナ前もICUや救急外来は看護師もマスクをしていたが、もはやどの病棟にいてもマスク着用が基準になったという。
「マスクの是非を医学的に説明するのは難しいですが、母としては、子どもの気持ちを優先したい。考え方は人それぞれだから、本人がしたいようにさせたいです」