「日本人が“これから激変する第4次AI世界”で生き残るために必要なこと」とは?「AI研究はタブー」とも言われた20年を第一人者が語る
「『サイエンスZERO』20周年スペシャル」取材班
サイエンス激動の時代を捉えるため、日本のサイエンス各分野の著名な研究者に「サイエンスZERO」の20周年(3月26日(日)夜11:30~ NHK Eテレ)を記念し、この20年の研究を振り返ってもらうインタビューを行いました。そこでどの研究者からも飛び出してくる驚きの言葉や知見、未来への警鐘とは―。
「これからAIがもたらす変革のインパクトは『インターネットの発明』以上のものになる」
そう語るのは、日本におけるAI研究の第一人者、東京大学大学院教授の松尾豊(まつお・ゆたか)さんです。今、対話型AI(人工知能)のChatGPTの登場が世界中に衝撃を与えています。「インターネットの発明よりも大きな変化が起きる」という松尾さんは、こうした新たなAIによって社会が激変する可能性を指摘します。
前編『「AIに仕事は奪われませんよ」から「今度は本当に奪われますよ」の逆転の衝撃…「第4次AIブームは《インターネットの発明》を超えるインパクトになる」と松尾豊さんが断言する理由』では、この新しい変化のインパクトについて語ってもらいました。
まさに「時代の転換点」を迎えているAI研究ですが、20年前の日本では「タブー」とさえ言われていた研究分野だったと言います。この20年、日本におけるAI研究はどのような経緯をたどってきたのか、そして日本がこの分野をリードする秘訣とはについてうかがいました。

人工知能研究は「タブー」だった⁉
―AI研究において、この20年はどんな20年でしたか?
まさに「知能とは何か?コンピューターで実現するにはどうすればいいか」を議論してきたAIが、「ついに動き出した20年」だったと思います。
僕が博士課程を出たのが2002年なので、その1年後は産業技術総合研究所でAIの研究をしていました。当時の人工知能研究といえば、第2次AIブーム(※2)のあとだったので、「もう終わった技術」だよねっていうか、あまりみんな口にしない感じで変な空気感がありました。要するに、ブームのあとだったので、AIという言葉自体が、「タブー」みたいになっていたんです。
※2 第2次AIブーム・・・AI研究は過去3度のブームを巻き起こしてきた。1950年代~60年代の第1次AIブームでは、コンピューターによる「推論」や「探索」の研究が進み、特定の問題に対して、答えを出せるようになった。1980年代に起きた第2次AIブームは、膨大な専門知識をコンピューターに取り込む「エキスパートシステム」が注目されたが、知識を蓄積・管理することの大変さが明らかになってくると、再び冬の時代を迎えることとなった。