生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている! NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。
書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』で、「昆虫」の謎が解き明かされる。
昆虫は“小さい”。これも生存戦略だ。人口の1億倍いるアリは9000万年前から“社会”を作って繁栄してきた。
今回私たち取材班は、系統分類学者の丸山宗利さんのもと、
【昆虫編第1回】<鳥も飛行機も敵わない! あたり前のように飛ぶ、昆虫の飛び方は“超ハイテク”&“型破り”!>はこちらから。
*NHKスペシャル「超・進化論 第1集 植物からのメッセージ ~地球を彩る驚異の世界~」は、
役割分担をしてキノコを育てるハキリアリの社会
昆虫は地球上に100京匹いると見積もられている。100京は1兆の100万倍。世界人口は80億人だから、昆虫は人間の1億倍以上、地球の陸地面積を約1億5000万平方キロメートルとして計算すると平均すれば1平方メートルに6600匹あまり(上空・地下を含む)いることになる。
昆虫がこれほど数を増やせた背景に、ここまで述べてきた飛翔力や完全変態など、適応ができる特殊な能力がかかわっているのは間違いない。しかし、見落としてはならない重要な要素がある。それは“昆虫は小さい”ということだ。
「いや、大きな虫もたくさんいる」と思われる方もいらっしゃるだろう。たしかに30センチを超える昆虫もいる。しかし大半の昆虫は数ミリから数センチだ。日本で最大級の昆虫といえばオオクワガタだが、体長は10センチ足らず。小さい分、食べ物は少ない量で、棲む場所も狭い空間で済む。資源を分け合って数多く暮らせるのだ。
そうして小さな昆虫が進化する中、9000万年前、人間顔負けの社会を作って、爆発的に種を増やした昆虫が現れる。

上の写真は、ブラジルで撮影されたアリの巣の調査の様子だ。丸いのが部屋で、部屋同士をつなぐ細い筒状のものがアリたちが通るトンネル。深いところで地下5メートル、巣全体の大きさは直径10メートルにも達する。
この巣を作ったのは体長1センチのハキリアリ。ハキリアリは葉を切り取って巣に運び、キノコ(菌)を植えつける。キノコを育て、食料にしているのだ。ハキリアリは「農業をするアリ」として知られている。
ひとつの巣になんと100万匹も暮らす。それぞれのアリは、行列を敵から守る係、葉をカットして運ぶ係、キノコの世話をする係などの役割を分担している。アリは複雑な社会を作ることで、大集団での暮らしを可能にするよう進化したのだ。