2023.03.29
# 細胞 # 遺伝子

怒らせたら危険なサスライアリの大集団に「居候」する謎多き昆虫をカメルーンで調査した!

超・進化論(15)

生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている! NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。
書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』で、「昆虫」の謎が解き明かされる。
昆虫は“小さい”。これも生存戦略だ。人口の1億倍いるアリは9000万年前から“社会”を作って繁栄してきた。
今回私たち取材班は、系統分類学者の丸山宗利さんのもと、世界一の大集団を作り怒らせたら危険なサスライアリたちのおこぼれにあずかる、謎多き昆虫ハネカクシの生態に迫った!

【昆虫編第1回】<鳥も飛行機も敵わない! あたり前のように飛ぶ、昆虫の飛び方は“超ハイテク”&“型破り”!>はこちらから。
*NHKスペシャル「超・進化論 第1集 植物からのメッセージ ~地球を彩る驚異の世界~」は、第64回科学技術映像祭において内閣総理大臣賞(自然・くらし部門)を受賞!

役割分担をしてキノコを育てるハキリアリの社会

昆虫は地球上に100京匹いると見積もられている。100京は1兆の100万倍。世界人口は80億人だから、昆虫は人間の1億倍以上、地球の陸地面積を約1億5000万平方キロメートルとして計算すると平均すれば1平方メートルに6600匹あまり(上空・地下を含む)いることになる。

昆虫がこれほど数を増やせた背景に、ここまで述べてきた飛翔力や完全変態など、適応ができる特殊な能力がかかわっているのは間違いない。しかし、見落としてはならない重要な要素がある。それは“昆虫は小さい”ということだ。

「いや、大きな虫もたくさんいる」と思われる方もいらっしゃるだろう。たしかに30センチを超える昆虫もいる。しかし大半の昆虫は数ミリから数センチだ。日本で最大級の昆虫といえばオオクワガタだが、体長は10センチ足らず。小さい分、食べ物は少ない量で、棲む場所も狭い空間で済む。資源を分け合って数多く暮らせるのだ。

そうして小さな昆虫が進化する中、9000万年前、人間顔負けの社会を作って、爆発的に種を増やした昆虫が現れる。

ブラジルで撮影された地下のアリの巣の様子。巣は体長1センチのハキリアリが作った。丸いのが部屋で、細い筒状のものが廊下の役割のトンネル。深いところで地下5メートル、巣全体の大きさは直径10メートルにも達する。映像提供 CMSFILMS/Wolfgang Thaler

上の写真は、ブラジルで撮影されたアリの巣の調査の様子だ。丸いのが部屋で、部屋同士をつなぐ細い筒状のものがアリたちが通るトンネル。深いところで地下5メートル、巣全体の大きさは直径10メートルにも達する。

この巣を作ったのは体長1センチのハキリアリ。ハキリアリは葉を切り取って巣に運び、キノコ(菌)を植えつける。キノコを育て、食料にしているのだ。ハキリアリは「農業をするアリ」として知られている。

ひとつの巣になんと100万匹も暮らす。それぞれのアリは、行列を敵から守る係、葉をカットして運ぶ係、キノコの世話をする係などの役割を分担している。アリは複雑な社会を作ることで、大集団での暮らしを可能にするよう進化したのだ。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大