30代半ばで子宮頸がんが見つかり、子宮全摘出。抗がん剤治療、放射線治療を経ていったん治療は終了したものの、1年後に再発し、腹直筋という部分に転移していることが判明した。しかもそれは、事務所設立と同じタイミング……。宮地真緒さんや田中偉登さんらが所属する芸能プロダクション『Andmo』代表の井出智さんに起きた出来事だ。
井出さんはそれでも前を向き、事務所の社長として俳優やアーティストのマネジメント業務を行い、緩和治療でがんによる痛みを抑えながら日々を過ごしている。

後編は、主治医に再発・転移と余命を告げられてからの井出さんが、今日までどんな想いで生きてきたのかということや今だからこそ伝えたいことなどについて、引き続きお伝えする。
医療監修/稲葉 可奈子医師(産婦人科医)
残された時間でがん予防を訴えたい
20207月、事務所設立と同時に、子宮頸がんの再発が判明。「あと1年です(中央値)」と主治医から余命を告げられた井出さんは所属俳優のことを考え込んだ。
妹や弟に知らせると「中央値はあくまでも中央値だよ。いつだって乗り越えてきたタイプだから気にするな」と励ましてくれた。俳優たちにはどう伝えよう……。結局、井出さんはありのままを伝えた。「ここに残ってもいいし、他の事務所に移ってもいいと話しました。それでも全員Andmoに所属していたいと言ってくれたので、私も覚悟を決めました。残された時間で精一杯マネジメントを続けていくつもりです」

もともとボランティア活動やチャリティーなどに参加していた井出さん。芸能界で働きだしてからも、所属の俳優たちとさまざまな社会活動に携わってきた。前編でお伝えしたように、子宮頸がんになって取り組んだのが啓発活動だった。
「日本は医療先進国だと思っていたのに、私は子宮頸がんの知識がないまま大人になり、気づいた時には手術が必要なほどにがんが進行していました。ワクチンで防げるがんなら予防しない手はないのに、HPVワクチンという予防ワクチン があることも知らなかった。世界では男女ともにHPVワクチンを接種できる国もあって、子宮頸がんをはじめHPV感染症が原因であるほかのがんも予防できるのに……。こんなにもったいないことはない。これ以上、私のような患者を増やしてはいけない、放置してはいけないという想いが強くあります」
俳優たちの力も借りて、少しでも多くの人が子宮頸がんにかからない未来が作れたら――。時間がある限り、俳優たちには医療現場のありのままを見てもらいたいという気持ちにもなった。「こんな機会なかなかないなと思って。がんと告知された患者がどうやって診断や治療を受けるのかを知ることは、きっと俳優業に活かせるはずと、受診に付き合ってもらうこともありました」
また、井出さんの思いに賛同した俳優たちは、2022年、2023年と「deleteC」プロジェクトに参加し、それぞれがSNSを通じてがん予防を訴えてくれた 。


https://www.delete-c.com/shikumi
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000065179.html