今もNetflixのトップ10に度々ランクインする韓国ドラマ『愛の不時着』。北朝鮮の将校と韓国の女性実業家が思わぬハプニングをきっかけに出会い、恋に落ちるというラブストーリーだ。

単なる甘いラブストーリーではなく、苦難や試練の連続。脇役に至るまでそれぞれのキャラクターが丁寧に描かれ、「ドラマとしての完成道が高く、ラブストーリー好きのツボを突きまくる」と言うのは、作家の井上荒野さんだ。

井上さんは、『愛の不時着』にインスパイアされ、ドラマ愛あふれる新刊『僕の女を探しているんだ』を上梓したばかりだ。インタビュー前編では、井上さんの『愛の不時着』への想いと今回の作品を書かれたきっかけについてお話いただいた。後編では、なんと過去にヒョンビンと会っていたエピソードなど、新刊にまつわるお話を伺った。

 

ヒョンビンとは10年以上前に出会っていた!?

私は普段、東京と長野を行き来しているのですが、長野にいる時は、映画なら1本、ドラマなら1~2話を毎日、夕食の後に観ています。よく観るのは海外もの。『愛の不時着』にハマっている=韓国カルチャー好き、ヒョンビン好きと思われてしまうのですがそうではありません。もちろん、韓国映画は素晴らしい作品も多いので見たりしますが、過去に話題になった『冬のソナタ』も観ていないし、K-POPも聴きません。韓国には何度か行きましたが、「美味しいものを食べに行こう!」という感じでした。

実は私とヒョンビンとの出会いは、10年以上前にさかのぼります。私の小説『帰れない猫』(アンソロジー「ナナイロノコイ」ハルキ文庫所収)が、韓国で『愛してる、愛してない』(2011年公開)というタイトルで映画化されたのですが、この映画で主役を務めた俳優こそがヒョンビンだったんですね。

もちろん私も映画を観ていますし、素敵な人だなとか演技が上手いな、と思っていたのですが、彼と『愛の不時着』のリ・ジョンヒョクの中の人が同一人物だとは3~4話観るまで気づかなくて。途中で「あれっ、もしやこの人は!?」とビックリしました。

井上荒野さん原作の『愛してる、愛してない』に出演したときのヒョンビン。photo/Getty Images

桐野夏生さんと対談した際、彼女は「ヒョンビンが大好き! スマホの待ち受けもヒョンビンにしているのよ」とおっしゃっていたので、私もその後、彼の作品を何本か観てみました。ドラマ『アルハンブラ宮殿の思い出』とか。それなりに素敵だなとは思ったものの、『愛の不時着』ほどには、刺さらなかったんですよね。

結局のところ、私はヒョンビン自身よりも「リ・ジョンヒョク」が好きなのだなとあらためて思いました。……と言いつつ、「ヒョンビンがファンミーティングで来日するよ!」と言われたら行きたいですけど(笑)。