岸田政権の「原発最大限活用」の危うさ…リスクだらけの愚策の中身【福島第1原発事故から12年】
ウクライナ侵攻が浮き彫りにしたリスク
「60年を超える運転はやめろ」――。
先週金曜日(3月11日)。こんな主張が書かれたプラカードを掲げて、市民有志が岸田政権の原子力政策に対する抗議の姿勢を鮮明にした。東日本大震災と東京電力・福島第1原発事故から12年の節目が到来した首相官邸の前(永田町)をデモ行進したというのである。

有志の批判が集中したのは、岸田政権が原発を「最大限活用」すると政策を大きく転換したことだ。事故直後、民主党政権が「2030年代に稼働ゼロ」を打ち出したのに対し、安倍、菅政権はこれを撤回したものの、それでも「可能な限り削減」すると節度を守っていた。ところが、岸田政権はそれすら翻し、運転開始から60年を超えた原発の稼働を認めるほか、これまでの国策になかった原発の新増設を推進するというのである。
その一方で、振り返れば、福島第1原発事故は、国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が定める「国際原子力事象評価尺度」で最悪のレベル7(深刻な事故)と、旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原発事故と並んで世界最悪の事故だ。今なお、多くの人々に他府県などでの避難生活を強いている人災なのである。明らかに、事故の反省と教訓がないがしろにされている。
当の岸田政権は、原発政策を転換しなければならない最大の理由として、ロシア軍のウクライナ侵攻に伴う国際エネルギー相場の高騰を挙げ、電力の安定供給のために原発の重要性が高まったと強調している。
しかし、同じウクライナ侵攻で、ロシア軍が早い段階から欧州最大級のザポリージャ原発を占拠して「核の盾」化を進めたほか、撤退後も攻撃を重ね、ザポリージャ原発は何度も電源を喪失。大惨事になりかねない事態を招いた事実には口をつぐんでいる。ウクライナ侵攻は、原発の存在が安全保障上の重大なリスクになり得ることを浮き彫りにしたのに、その事実からは目を背けて国策を歪めていると言わざるを得ない。