2023.03.16

日本で「はじめてアイスクリームを食べた」人は、どんな反応をしたかご存知ですか?

ケーキ、キャラメル、プリン、アイスクリーム……優雅な味わいや楽しい食感、ふくよかな香りでわたしたちを魅惑し、日常生活を彩ってくれる「洋菓子」の数々。

その大部分は、幕末・明治時代になって日本に入ってきたものですが、意外にもわたしたちは、それらお菓子の「導入」や「発展」「流行」について、それほど知識をもたなかったり、あるいは忘れていたりするものです。

若かりし日にフランスやスイスで修行し、世界的に有名なパティシエとなった吉田菊次郎さんは、祖父の代から「お菓子屋」をなりわいとしてきた家業ですが、その視点から、日本のお菓子の近代史をひもといた書籍が『日本人が愛したお菓子たち』です。

甘く、優雅な魅力にあふれたお菓子の近代史。ここでは、「アイスクリーム事始」にまつわる経緯を、同書よりご紹介します。

(*本記事は、『日本人が愛したお菓子たち』を抜粋・編集したものです)

1950年代、東京の高島屋でアイスを求める人たち〔PHOTO〕Gettyimages
 

「之をあいすくりんといふ」

アイスクリームというものを、邦人として初めて口にしたのは、おそらく幕末に遭難漂流しアメリカ船に拾われたジョン・萬次郎あたりかと思うが、確証あるところでは幕末の万延元(1860)年、アメリカの軍艦ポーハタン号に乗った幕府の使節団と、日本の軍艦咸臨丸に乗った一行ではなかろうか。

この中にはジョン・萬次郎もいたが、彼を除いては異国が初めてのものばかりゆえ、様々な珍道中が繰り広げられた由伝えられている。例えば会食時にも、履物のまま絨毯の上を案内されてまずびっくりし、水に浮かぶ氷、音の出る酒シャンパンと、いちいち驚きの連続であったという。

ところで彼らはサンフランシスコに到着後、首都ワシントンに向かうためアメリカ政府の出迎え船に乗り移った。その中で新見正興(しんみ・まさおき)らの幕府使節団は初めてアイスクリームに接する。

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