これからのものづくりに“サステナビリティ”は欠かせない視点。地球環境は守られているか。働く人たちへの配慮がされているか。残すべき伝統がきちんと次世代へ継承されているか。私たちは作られた背景に賛同し、応援する気持ちで選びたい。作り手の思いを聞きに、ものづくりの現場を訪ねました。今回は、ノルウェー産シーフードに注目します。
“持続可能性”が徹底されたノルウェー産シーフード

鮮魚店やスーパーの店頭でよく目にするノルウェー産シーフード。脂の乗ったサバや寿司ネタでも人気のサーモンは、日本近海で獲れるものとは違った味わいですっかり市民権を得ている。遠く離れた国のおいしいシーフードを堪能できることに注目が集まるが、実は“サステナビリティ”という観点においても世界を救う、ひと筋の光となっている。

ひとつには、人口増加による食糧問題。2022年11月、世界の人口が80億人を突破した。単純に食糧が不足するだけでなく急速な人口増加によって温室効果ガスの排出量が急増し、気候変動による異常気象を引き起こす。農作物の不作が起き、人々は飢餓に陥るという負の連鎖が懸念される。さらに、2050年には世界の人口は97億人に達するといわれている。ノルウェーの通商産業水産省所管で市場開拓に取り組む「ノルウェー水産物審議会」(以下NSC)の日本・韓国担当のディレクター、ヨハン・クアルハイムさんはこう話す。
「地球の表面の約70%が水に覆われているにもかかわらず、世界の食糧生産のうち海から調達されている食糧はわずか5%のみ。今後、陸上の食糧生産が限られていくなかで、将来的にタンパク質を供給するために水産物が果たすべき役割が非常に大きいと考えています」

日本とほぼ同じ国土面積であるノルウェー。世界第2位の海岸線の長さと国土の約6倍の海洋面積を持ち、人口は日本の1/20以下でありながら、世界で第2位の水産物輸出量を誇る。南西側にある北海は、メキシコ湾から流れ込む暖流の影響で冬でも凍結することがない。澄みきった冷たい海水が豊かな生態系を形成することで、漁場としても恵まれている。現在、世界トップレベルの水産大国として、魚の獲り方を法律で厳しく規制するなど、次世代のために海の生態系を守ることに尽力している。

「海からの恩恵を受けているからこそ、資源を守り続ける義務があります。魚について最初に追跡調査を導入した国でもある。トレーサビリティを可能にした監視システムでは、養殖や海上輸送インフラを含む全工程において、通商産業水産省とNSCが関わり、魚の健康と保護、食の安全に全責任を負うという徹底したルールに基づいています」
そんな高い意識を持ったノルウェーも、かつて資源枯渇寸前に陥った時代があった。1960年代、ニシンの乱獲で産卵量が激減。当時は、水産物に対する資源管理の意識が低く、体制も整っていなかった。その反省から71年には法律でニシンの漁獲規制を制定、水揚げ量を競う形ではなく、共有財産として全体で調整する方向に舵を切ったのだ。