「無限とはなんだろう」と聞かれると何を想像しますか。限りが見えない宇宙を想像したり、哲学的に考えたりする人もいることでしょう。実は、数学の世界では、この「無限」があらゆる場面に顔を出し、多くの数学者を魅了し続けてきました。
今回は、そんな「数学の中のふしぎな無限の世界」を紹介した『無限とはなんだろう』 (玉野研一著/講談社ブルーバックス)の中から、ゼノンのパラドクスとして有名な「アキレスと亀」を紹介。その中にある「無限の世界」を見てみましょう。

※本記事は『無限とはなんだろう』を一部再編集の上、紹介しています。
アキレスと亀の問題
足の速いアキレスは友人の亀と競走した。ハンディをつけて、アキレスは亀の後方1kmから出発する。アキレスは亀の2倍のスピードで走る(亀の2倍のスピードでは、決して足が速いと言えないような気もするが、そこは目をつぶっていただきたい)。さて、このときアキレスは亀に追いつくことができるだろうか。
ゼノンは、次のように考えた。

アキレスが最初、基準となる0kmの地点から亀のいた位置P₁=1kmの地点に到達したとしよう。そのときにはすでに亀はもっと先の位置P₂=1.5kmの地点にいるはずである。
次にアキレスはがんばって走ってP₂まで行ったとする。そのとき亀はすでP₃=1.75kmの地点まで行っているはずである。
この操作は無限に続き、アキレスは亀に決して追いつくことができない。これがゼノンのパラドクスである。