慌てて近所中に聞き回って、裏に住んでるおじいさんが寄り合いに乗って行ったことがわかったんで、すぐに戻って来て欲しいと電話したら、お酒を飲んだ状態で運転して来た挙句に事故ってしまって、車が走行不能になり……。
嘆いてるヒマもなく救急車を呼びましたが、ただでさえ消防署が遠くて時間がかかるうえ、近所の人が路上駐車した車が道を塞いで救急車が通れなかったんです。ぐったりした子供を抱えて、私も夫も半狂乱でした」
ようやく乗り込んだ救急車の中で、熱性けいれんを起こした子供を抱きかかえながら、久美さんの不安と焦りは頂点に達する。
「搬送先の病院での診断は水疱瘡でした。水疱瘡の予防注射の日にも近所から頼まれごとをして、結局行けずじまいだったことを思い出しました。年寄りが自分の都合を最優先にして、平気で子供を蔑ろにする。蔑ろどころか、身の安全すら二の次にされる……もう、こんなところでは暮らせないと思いました」