なぜ戦争が起きるのか? 地理的条件は世界をどう動かしてきたのか?
「そもそも」「なぜ」から根本的に問いなおす地政学の入門書『戦争の地政学』が発売前から話題になっている。
地政学の視点から、ロシア・ウクライナ戦争を分析して見えてくることとは——。
人間・国家・国際システムという要因
ロシアによるウクライナへの本格侵攻が始まって、一年が経過した。欧州においてほどではないが、恐らくは他のアジア地域などよりは激しく、日本でも様々な議論が喚起された。極めて印象的なのは、他の国際的な事件では見ることができないほどに、感情的なやり取りが行き交っているいることだ。
戦争の背景には、根深く複雑な要因がからみあう。国際政治学の教科書的な分析にしたがって整理するだけでも、私自身が行ったことがあるように、人間のレベル(プーチン大統領の持つイデオロギー)、国家のレベル(ロシアの特異な権威主義的レンティア国家性)、国際システムのレベル(欧州の安全保障メカニズムの機能不全)という三つの位相から、問題を捉えることができる。