「はやぶさ」から「太陽系大航海時代」へ
―「はやぶさ」の打ち上げから20年が経ちました。「はやぶさ」は何を成し遂げたのでしょうか?
20年前というのは、はやぶさを打ち上げた年であり、ちょうどJAXAができた年でもあります。この20年は、なんといっても「『はやぶさ』が成し遂げた往復の宇宙飛行の時代」ですよね。近年、探査のスケールというのは、月など地球の引力圏の話ではなくて、太陽系全体のスケールの話になりました。「太陽系大航海時代」と呼べる、そういう時代に入ったんだと思います。
特に、はやぶさプロジェクトでは、再利用可能な往復の宇宙船の運用ができるようになりました。アポロや他の探査機は、宇宙船を切り離して、探査モジュールを全部捨てて、戻って来るのはほんのわずかというやり方ですが、はやぶさは地球を出た時の形と同じ形で戻って来ます。これは、再利用可能な宇宙船なんです。
もう一度、整備して、推進剤を入れ直せば、もう1回飛行に出られるわけですよね。太陽系大航海時代の中で、再利用可能な宇宙飛行ができるようになるという時代がもう来ているのかなと思います。そのうちに人間が往復するようになってきますよ。往復10年、15年という飛行を行う時代が、もう見え始めていると思います。

―川口さんが見据える太陽系大航海時代の技術で、他にカギになるポイントはありますか?
太陽系大航海時代を支えるカギは、なんと言っても「有人技術」ですね。宇宙ステーションもですが、長期滞在をすることについては、大きな進歩を遂げています。今後欠くことができない技術だと思います。
それから、太陽からもっと遠い場所を飛行するのであれば、太陽電池が使えないので「原子力推進」は欠かせないと思います。原子力推進は、まだ実用化されていませんが、いずれ登場してくるんじゃないかと思っています。
―今後20年に期待していることは?
1つは「生命探査」です。それからもう1つは、何年単位という飛行が可能になるような「有人飛行技術」ですよね。それこそ、人工の重力を作るとか、人工冬眠もそうです。それから、病院があるわけではないので、治療を行う事も自分たちでやらねばならないようになるでしょうから、こうした医学も含めた宇宙飛行の技術が伸びて、往復の宇宙飛行ができる時代に力を発揮する人が出てくればいいなと思います。