「受け身にならず、イノベーションを!」若い世代に期待すること
―ご自身の経験から、日本がこれからも独自の技術で宇宙に挑むには何が大事ですか?
「はやぶさ」「はやぶさ2」は、成果が残せているので、おかげさまで多くの方に理解をいただきました。理解者を増やすことができたというのは大きな事だったと思っていますね。大きな挑戦をするということは、これまで行ってきた延長ではなくて、全く違う事を考えなきゃいけないわけですよね。いけないってわけじゃないですけど、イノベーションってそういうものなので。
地道に今ある事を延長していくと、進歩は進歩なんですけど、そうでない事を考えるべきじゃないかなというのが、私の気持ちですね。そういう人が今、まさに登場してくるのかもしれませんから、ぜひ期待したいと思っています。私に「良き理解者」がいてくれたように、次は自分たちの世代、自分たちが良き理解者であるように努力しなくちゃいけないんでしょうね、そう思っています。
―若い世代に向けて、川口さんが今伝えたい事はありますか?
自らが努力しないといろんなことが開けていかないですよね。受け身になりがちなところが日本人には多いですが、何かが提供されていなくても自ら動くというのは大切なことですね。受け身にならないで、積極的な行動をとるような人材が増えてくれればありがたいなと思います。
私はずいぶん、むちゃなことをやってきたので、私の先輩方から見ると、何やってたんだと言われかねないところもありますが、いろんなことに取り組んでいってほしいですし、ぜひ頑張ってほしいなと思いますよね。

―最後に、「高い塔を建てて水平線をひろげよ」というお言葉をいただきました。その意味を教えてください。
ひと頃、ずいぶんよく言っていた言葉なんです。高い塔を建てなければ、より広い水平線は見えてきません。どちらかというと、しっかり足元を固めるっていう風に考えがちなんですけど、そうではないよって伝えたいです。少し高い所に上がれば、見えていないその次のゴールが見えてくるということです。
もうひと言、「やれる理由をさがせ」という言葉も伝えたいです。やれる、やらせてもらえる理由をどんどん開拓するということです。何かの機会を待っていて、何かが始まるわけではなくて、積極的に、そこに乗り出さなければ先は開けません。これはとても重要な事で、JAXA宇宙科学研究所の先輩方の文化がそうでした。プロジェクトをやっていく上での一番の大きな原動力だったんです。だから、若い人たちにそういう考え方を持ってほしいなというのが、この言葉ですね。