有給休暇で選挙応援…「農協の独裁者」が支配するJAグループ京都…勤務する農協職員たちのヤバすぎる実態
「農協の独裁者」と呼ばれる男がいる。その名は中川泰宏。
中川が1995年から会長を務める「JAバンク京都信連」(京都府信用農業協同組合連合会)の貯金残高は、1兆2567億円に達する。副会長を務めるJA共済連(全国共済農業協同組合連合会)の保有契約高は、なんと227兆円だ。JA共済連で保険商品を売り歩く農協の職員数は、18万6000人にのぼる。
京都の農協で27年以上にわたってトップに君臨しながら、中川泰宏は農協の労働組合潰しや悪質な地上げに手を染めてきた。2005年には「小泉チルドレン」として政界に進出し、野中広務と骨肉の争いを繰り広げる。
「週刊ダイヤモンド」記者として取材してきた千本木啓文氏が「農協の独裁者」中川泰宏の実像に迫る。新刊『農協のフィクサー』から読みどころを抜粋、ご紹介しよう。
連載『農協のフィクサー』第8回前編
ガラス窓一面に貼られたポスター
中川泰宏に二七年以上にわたって牛耳られてきたJAグループ京都では、選挙で中川に貢献した職員が登用される異常な人事が行われてきた。農協幹部が代表などを兼ねる政治団体は、公職選挙法に抵触する疑いのある活動を行っているなど問題が多い。二〇二二年に七一歳になった中川は、自らの後任に子飼いの幹部を据えて院政を敷き、世襲を画策しているとみられる。本来、農家によって民主的に運営されるべき農協が、中川個人によって支配されている実態を明らかにする。
次の写真はJAグループ京都の実態をよく表している。写真に写っているのは、中川泰宏が会長を務めるJA京都の八木支店の建物だ。驚くべきことに、掲示板だけではなく一~二階に見える全てのガラス窓に、政治活動用のポスターがべたべたと張られている。

現職の西村良平市長の知名度を上げることが目的とみられるポスターがべたべたと張られている
ポスターには、京都府知事の西脇隆俊と南丹市長の西村良平が引き締まった表情で登場し、新型コロナウイルス感染防止策の徹底を呼び掛けている。西脇は自民党や立憲民主党などの推薦を受けて二〇一八年の知事選で勝利した、固い支持基盤を持つ知事だ。