JAグループ京都で若手職員の離職が絶えない理由
「農協の独裁者」が支配する組織の実態「農協の独裁者」と呼ばれる男がいる。その名は中川泰宏。
中川が1995年から会長を務める「JAバンク京都信連」(京都府信用農業協同組合連合会)の貯金残高は、1兆2567億円に達する。副会長を務めるJA共済連(全国共済農業協同組合連合会)の保有契約高は、なんと227兆円だ。JA共済連で保険商品を売り歩く農協の職員数は、18万6000人にのぼる。
京都の農協で27年以上にわたってトップに君臨しながら、中川泰宏は農協の労働組合潰しや悪質な地上げに手を染めてきた。2005年には「小泉チルドレン」として政界に進出し、野中広務と骨肉の争いを繰り広げる。
中川が支配するJAグループ京都では、職員たちが中川の駒として働くことを強いられており、嫌気が差した若手職員の休職・離職が続いているという。前編に引き続き、新刊『農協のフィクサー』からご紹介する。
連載『農協のフィクサー』第8回後編
本来、農家によって民主的に運営されるべき農協——。しかし中川が支配するJAグループ京都では、農協職員がプライベートの時間を犠牲にして選挙を手伝い、中川の政治力拡大への貢献が認められた人物のみが出世するという実態があった。
家族ぐるみで中川に尽くす忠臣

上の図を見てほしい。JAグループ京都幹部が、選挙の候補者あるいは参謀役として活動していることがわかる。
この図から見て取れるのはそれだけではない。中川に選挙で貢献した人物が露骨に登用され、将来を約束されているのだ。
選挙活動の司令塔であるJA京都中央会から見ていこう。
忠臣の代表といえるのが、二〇〇七年からJA京都中央会常務理事、二〇一一年から専務理事として中川を支えてきた牧克昌だ。
現在、代表理事専務を務める牧はJAグループ京都において中川に次ぐ権力者であり、目下の人間に絶対服従を求める点で中川と似ているため、“ミニ中川”として恐れられている。政治団体でも「京都府農協政治連盟」の代表、「中川やすひろ後援会」の後継組織「泰山会」の会計責任者という重要ポストを任されている。
牧が他の幹部と違うのは、JA全農の職員である息子も、運転手や身の回りを世話する秘書役などとして中川に仕えていることだ。家族ぐるみで中川に尽くす忠臣中の忠臣なのである。