100年で8~4%にまで減ったゾウ
数多くの野生動物が暮らす、アフリカの国立公園。
中でもボツワナ、モザンビーク、タンザニア、ケニア、ザンビアは、ゾウの生息数が多いベスト5カ国である。
だがアフリカ全体で500万頭から1000万頭いたとされるゾウは、たった100年の間に40万5千頭にまで減ってしまった。その理由は「密猟」だったと、旅行作家の山口由美さんは聞かされた。
旅とホテルをテーマにノンフィクション、小説、紀行、エッセイ、評論など幅広い分野で執筆する山口さんは、33年前に体験した「エコツーリズム」の原点を探りに、昨年の11月中旬から12月初旬にかけてザンビアを再訪した。
そこで聞いたのがムフウェロッヂの「Elephants in Reception」。ロッヂのレセプションを通って、野生のゾウが中庭まで入ってくるという。
ゾウと自分を隔てる柵もない中庭で、触れるくらいの近さでゾウと出会った山口さんの体験は、前編「アフリカ・ザンビアのロッジに、10月から12月だけ野生のゾウが集まってくる理由」にてお伝えした。
だが間近で見たゾウに圧倒され、ドキドキする山口さんは、ガイドから無情な現実を聞く。
1950年代から60年代のザンビアにいた約25万頭のゾウが、1989年にはわずか約1万8000頭にまで減少した事実。それは密猟が原因だった。
ザンビアだけではない。1977年に始まったモザンビークの内戦で、双方の軍隊はアフリカゾウを狩り、象牙を売って戦争の資金源にした。その結果、1992年までに、ゴロンゴサ国立公園内のゾウの数は90%以上も減少してしまった。(「メスのアフリカゾウから牙がなくなった…密猟者から逃れるために急速に進化 」 Business Insider Japanより)
殺されたのは、象牙を奪われたゾウだけにとどまらない。象牙のために母親が殺されれば、残された子ゾウは、自力で生き延びることはできないのだ。
首都ルサカの郊外に、密猟者に親を殺されたゾウの孤児を保護している施設があると聞いた山口さん。後編では、山口さんに保護施設における子ゾウたちの暮らしと、彼らを野生に戻す過程について執筆いただいた。