「できる社員」をマネしただけでは成果は出ない…「成長する組織」がしていること
本当のナレッジマネジメントとはMVPを獲得した大谷選手や村上選手、ヌートバー選手などの活躍により、日本が世界一となって幕を閉じたWBC。侍ジャパンの勇姿を思い出しながら、「あんなスーパースターが我が社にいたらね」と嘆くビジネスパーソンの方もいるかもしれません。
でも、特別な選手が1人いてもチームは勝てません。また、スター選手のやり方をマネすれば、皆がMVP級の働きができるわけでもありません。
会社の中にいるスター社員の何をどうマネすれば、チーム力は向上するのでしょうか?
ビジネスの世界でさまざまな企業の営業改革を支援し、『トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント』の著者でもあるイネーブルメント分野の第一人者・山下貴宏氏に、“できる社員”に近づくための方法について話を聞きました。
「型を理解する」のが成功への第一歩
“できる社員”が会社の業績に大きく貢献していることは疑いようがありません。では、彼らのノウハウを共有して、マネすれば効果的に業績は上がっていくのでしょうか。

「彼らのやり方やノウハウを教えてもらっても、周囲がその通りにできるとは限りません。例えば、顧客に提案する企画書を共有したとします。それをなぞるようして、顧客や商品名や日付を変えれば、すべての顧客が提案にGOサインを出すわけではありませんよね?
なぜ企画書でこの表現にしたのか、構成にしたのか。工夫されている点はどこか、自分に落とし込めなければ、宝の持ち腐れです。
そのために大事なのが、“型を理解する”ことです。野球のバッターも、正確かつ、バットに最適な力を伝えるためのスイングの型があり、それを状況に応じて使い分けているはずです。それを無視して、ただ大谷選手と同じバッティングフォームだけを会得したり、同じバットを使っても、打力が身につかないのと同じです」
成功するための型を知って、それを自分なりにどういう風に落とし込むか。これまでの課題は、型が言語化されてこなかったため、だからこそ客観視もできず、マネするにしても何をマネすればいいか具体的でなかった、と山下氏は言います。
「できる営業に“どうしたら商談がうまくいくのか?”と聞いたときに、“マネージャーの真似をすればいいですよ”と答えが返ってきたとします。それはわかっているけど、“マネージャーのどういうところを、どういうステップを踏んでできるようになればいいのか?”を周囲は知りたいわけです。
とはいえ、そうした具体的な掘り下げ方や整理まで、彼らに望むのは難しい。あくまで彼らは営業で成果を出す人で、知識やノウハウを整理する人ではないからです」
つまり、できる社員をモデルに整理・分析し、型として落とし込むことに長けた人が組織には求められます。