FRaUが全国の新聞社とパートナーシップを結び、日本各地の高校・大学生らと、サステナブルな未来を切り開く「FRaU×Z世代SDGsプロジェクト」。第三弾が行われたのは、今月11日、東日本大震災の発生から12年を迎えた福島県。SDGsに力を入れる福島民報社とともに実施したディスカッション「福島の私たちから地球の未来を変えるはじめかた。」に参加した福島県立あさか開成高等学校のみなさんは、幼かった震災当時のこと、そして現在も復興作業が続く今、何を想っているのでしょうか。SDGsのゴール達成に向けたアクション、課題に感じていることについても教えてもらいました。

登壇者はこちら!
福島県立あさか開成高等学校のみなさん
福島民報社編集局次長 渡部育夫さん
ソーシャルグッドプロデューサー 石川淳哉
FRaU編集長 兼 プロデューサー 関龍彦

▶︎vol.1  神戸のZ世代のみなさん。大人に言いたいこと、メディアに求めることを教えてください!
▶︎vol.2 「女らしく男らしくという概念は自由を奪う」Z世代がジェンダー問題に抱く本音

原発事故による福島に向けられたイメージを変えたい

渡部育夫さん(以下、渡部さん) 東日本大震災の発生から12年を迎えました。みなさんは小学校に入る前のことだと思いますが、震災を経験した福島県民として、いま感じていることを教えてください。

 
左上・石川淳哉 右上・関龍彦 下・あさか開成高等学校のみなさん、渡部育生さん

増子音々さん 当時私は5歳、宮城にある祖母の家で被災しました。突然の大きな揺れで、食器棚が倒れ、食器の破片が散らばり、外の木は次々と倒れ……初めてみた光景を、今でも鮮明に覚えています。2歳年下の妹は、当時のことをあまり覚えていないそうです。私は、妹のように記憶がなかったり、また大震災を経験していない世代に向けて、地震のこと、二次災害でどのような被害が起こったのか、そして避難してきた人たちの行動などを、経験者の声を交えて伝えていくために、「語り部」に参加しています。「語り部」の活動では、東日本大震災・原子力災害伝承館や被災した請戸小学校を見学したり、被害の大きかった地域の方の話を聞いたりしています。今でも復興作業は続いています。その様子をただ見ているだけでなく、私にできる形で伝えたいという思いが、「語り部」での活動を通じて、さらに強く思うようになりました。

そして今では美味しいと食べてくれる他県の方も増えましたが、福島産の食材を買うのを躊躇する人もいます。震災による原発事故でついてしまった福島の人や食材に対する悪いイメージを払拭するために、当時の状況とともに、福島の魅力も他県の人たちに伝えていきたいです。

増子音々さん

相樂碧姫さん 震災当時の状況や経験を語る方も少なくなり、風化されつつあると感じています。どんな被害が起こったのか、避難先の様子などを知ることが大切だと思います。また地震のほかに福島は原発事故によって放射線被害があり、その影響は国内だけでなく海外にも広がりました。そこでまず自分たちが福島の特産品の魅力を知り、多くの人に伝えることで、原発事故による福島に向けられたイメージを変えていきたいと思っています。

相樂碧姫さん

矢森美咲さん 当時私は4歳でしたが、震災の記憶があまりありません。そんな私が地震について考えさせられたのは、小学生の頃にみた津波の映像でした。なんだか映画の世界のようで、現実のことだと信じられませんでした。

矢森美咲さん

阿部遥那さん 保育園のお昼寝の時間に震災が起こりました。先生たちに起こされ、大きな体育館に避難。不安と恐怖でいっぱいだったのを覚えています。その後、何日も続いた余震、地震速報のアラート音が怖くて、トラウマになったりもしました。福島に住む人間として、震災のことを忘れずに、これからの世代に伝える活動をしていきたいですし、たくさんの人たちに、災害が起こる可能性や、対策についてもっと考えて欲しいなと思います。

阿部遥那さん

箭内佑都さん(以下、箭内さん) 僕は中学2年生のときに、かつてチェルノブイリ原発事故が起こったベラルーシ共和国を研修で訪れ、チェルノブイリ原発事故からの復興を実際にみてきました。福島とチェルノブイリの原発事故は異なる点が多く、さらに福島に比べてベラルーシは復興がかなり進んでいると感じました。しかし現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻では、ベラルーシはロシア側に協力的です。またロシアはザポリージャ原発をたびたび攻撃しており、もしザポリージャ原発が爆発したら、その被害は、チェルノブイリ原発事故の約10倍にも及ぶと言われています。

僕は原発事故への思いを多くの人たちに伝えるために、プレゼンテーション講座「ふくしまナラティブ・スコラ2022」に参加し、プレゼンテーション力を磨き、福島とベラルーシを重ね合わせながら、多くの人に“想い”を伝えたいと考えています。

箭内佑都さん

渡部 深すぎる傷を負ってしまった福島を、未来に残していこう。持続可能な未来を築き直していこう。その思いが、SDGsを進めていくうえで大きなヒントになるのでは。福島だからこそ挑戦できるSDGsアクションがあると思っています。

石川淳哉(以下、石川) 僕は震災直後から、東北に行きっぱなしで現地取材をし、世界に発信し続けてきたけれど、6年半くらい経った頃、その活動から撤退しました。それから約5年が経った今日、改めてもう一度、伝える活動をしなければいけない。そんな気持ちになりました。

渡部 滋賀県の彦根東高校の新聞部の生徒さんが、毎年、福島に取材にいらっしゃるんです。そんな彼らも7年経った頃に、「もういいんじゃないか」そう思い、いわき総合高等学校を訪れたそうです。そしたら「7年が経ち、ようやく話せるようになりました」と、思いを語ってくれたそうなんですね。年月が過ぎ、また違う思いが芽生えてくるものなのかなと。ちなみに彦根東高校のみなさんは、今も取材を続けています。

石川 ちなみに政府が原発の新設について検討しているという動きがありますが、その件について、みなさんの意見をお聞かせいただけますか?

箭内さん 日本の原発は、海岸沿いに多いですよね。だから処理水の海洋放出の問題とか関わってくると思うんですけど、もしまた爆発したら、同じような被害が起こるんじゃないか。福島原発事故での経験を踏まえた上で、みんなが安心できるようにつくらなくてはいけないと思います。

藤田瑞樹さん(以下、藤田さん) そもそも再稼働に対する反対する動きが起きているのに、さらに新しくつくるとなるとさらに反感を買うことになるのでは。

藤田瑞樹さん

石川 ありがとうございました。ちなみにこのニュースについて知っている人は、この中で2人だけでしたが、この会が、原発に関しても、またみなさんと語り合うきっかけになればいいですね。

渡部 そうですね。エネルギーは生活、生命に関わること。現在、日本は火力発電が中心で、燃料を石炭、石油などを燃やし、電力を生み出しています。そこで発生する大量の二酸化炭素が与える環境負荷に関する問題についても、私たちは知恵を出さなくてはいけません。そしてその先の未来にいるのは、みなさんや、みなさんより年下のさらに若い世代なので、このようにして一緒に考える環境をもっとつくっていかなくてはいけないと感じました。