2024年の大統領選に立候補しているドナルド・トランプ前大統領は、かねて交渉による停戦を主張している。同じく有力候補の1人であるロン・デサンティス・フロリダ州知事も3月13日、FOXニュースの番組で「ロシアの侵攻からウクライナを守るのは、米国の死活的利益ではない」と語った。
バイデン政権はこうした声を無視できず、昨年秋からゼレンスキー政権に水面下で停戦交渉を促してきた。クリミア半島の奪回を含めて徹底抗戦を叫ぶゼレンスキー政権との違いは、このあたりから明白になっていた。

中国はチャンスを見逃さない
激戦が続く「バフムートの攻防」も、すれ違いの要因だ。
米側は一貫して「バフムートは重要拠点ではない。その防衛に力を入れるくらいなら、別の戦いに戦力を割くべきだ」と主張してきた。ロイド・オースチン国防長官は、3月6日の会見で「戦略的で作戦上の価値というより、象徴的な意味合いが強い」と公言したほどだ。
ところが、ウクライナ側はバフムート防衛にこだわり、両者の違いは解消できないまま、現在に至っている。
脱線するが、たまに目にする日本のテレビは、バフムートの戦いがあたかも勝敗を決するかのように、細かい戦況を解説している。だが、米宇のすれ違いのほうが、はるかに重要ではないか。日本のマスコミ報道を見ていては、大局を見失ってしまう。