3月12日付のポリティコによれば、昨年9月のノルドストリーム(バルト海の天然ガスパイプライン)爆破事件をめぐって「親ウクライナ勢力の仕業」という報道が流れた件も、米宇の緊張を招く一因になっている。これは米情報機関を情報源にしたニューヨーク・タイムズの報道だったが、ウクライナは「米国がオレたちのせいにしようとしている」とみているのだ。
こうした米宇間に流れている微妙な緊張感を、中国は見逃さなかった。「ウクライナが米国に見捨てられかかっている。いまが介入する絶好のチャンス」とみたのである。
ちなみに、中国によるサウジアラビアとイランの外交仲介も同じパターンだ。サウジは米国の同盟国だが、ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子がジャーナリストの殺害事件に関与した疑いが出て、両国の間に強い緊張が生じた。わだかまりが完全に解消していない間隙を縫って、中国がサウジアラビアに接近したのである。

日本、米国、ウクライナはどう出るか
ゼレンスキー大統領は、どうするか。
米国が手を引けば、戦争を続けられない。完全に手を引かないまでも、欧州が米国の穴埋めを引き受けなければ、クリミア半島の奪回は望むべくもない。武器弾薬のストックが底をつき始める夏までに、戦況を好転できなければ、戦い続けるか、停戦に応じるか、厳しい選択を迫られるだろう。