桜の開花も始まり、春本番を迎えつつある日本列島。しかし、季節の変り目のこの時期に心身の不調を訴える人は少なくない。低気圧や寒暖差による「頭痛」や「疲労」、4月から始まる新生活へのストレスや不安による「不眠」や「メンタルの不調」など、誰もがリスクを抱えていると言っても過言ではない。 いま、こうした心身の不調への解決策として、日本のみならず世界でも注目を集めているのが、漢方薬や鍼灸治療、そしてヨガなどの「東洋医学」であることをご存じだろうか。最新科学で分かってきた効果の秘密、そして、医療現場などでの導入事例などをもとに、治療やセルフケアの最前線に迫っていく。(東洋医学ホントのチカラ取材班)
前編『天気による体調不良…原因は「体内の水のバランスの乱れ」にあった⁉「水毒」と呼ばれる症状の正体と《危険度チェックリスト》』では、気象病ともいわれる天候による体調不良の原因が、東洋医学の知見によると「水毒」という体内の水のバランスの乱れによって起こること、そのチェック法などについて見てきた。後編では、「水毒」の治療にどのような有効な手段があるのか、その科学的背景などについて紹介したい。
水毒の改善に効く漢方薬「五苓散(ごれいさん)」
では、こうした「水毒」に対して、どのような治療が効果的なのか? 日本で古くから使われてきたのは「五苓散(ごれいさん)」呼ばれる漢方薬だ。キク科の植物の根や、キノコの仲間などの生薬からなり「水のバランスを整える」作用がある。天気による不調の症状である頭痛やめまい、むくみなどの改善に処方される最もメジャーな漢方薬である。

こうしたなか、「五苓散」の謎の解明に挑んでいるのが、東京理科大学薬学部の磯濱洋一郎教授だ。磯濱教授が注目したのは、細胞を囲む細胞膜に存在する「アクアポリン」と呼ばれるたんぱく質。細胞の内外にある水分子を通して、体内の水分を調節する重要な働きを持っている。そこで、磯濱教授は、五苓散とアクアポリンとの関係を調べるため、マウスの体に水を注入し、水分バランスを崩す実験を行った。

