良い言葉を発すれば、本当に良いことが起こり、逆に、不吉な言葉は災いをもたらす—。日本人は『古事記』の時代から、「言霊」の存在を信じてきた。ともすればオカルトのように扱われがちな概念だ。しかし、最新の脳科学は、言葉がいかに人間の行動の成否を左右するかを証明している。
平昌五輪スピードスケート金メダリストの高木菜那(高ははしごだか)ほか、多くの選手を指導してきたメンタルコーチの飯山晄朗氏が言う。
「近年の研究によると、人間は頭の中で思い描いているイメージよりも、口から発した言葉に影響されやすいことがわかっています。脳内で成功のイメージを描いていても、ふと不安になり『ヤバい、どうしよう』とつぶやいてしまえば、脳は一気に上書きされてしまう。どんな言葉を発するかは、脳のパフォーマンスに重大な影響を及ぼすのです」
悲観的な言葉は口にしない
その点、大谷が自分自身の将来について、悲観的な言葉を口にしたことは一度たりともなかった。
〈無理だと思わないことが一番大事だと思います。無理だと思ったら終わりです〉
〈頭で最初に考えて、そして後からモノができる。160kmを投げている姿がある。そこに後からできる現実がある〉
〈頭で最初に考えて、そして後からモノができる。160kmを投げている姿がある。そこに後からできる現実がある〉

驚くような目標を、臆することなく公言する。さりとて、虚勢を張っている様子も、自分に過度なプレッシャーをかけ、悲壮感を漂わせることもない。あくまで自然体だ。
〈(ピンチのときは)ポジティブに考えようとは思っていない、ということですね。何事もバランスかなと思っているので〉