「泣きっ面に蜂」とは、泣くほどのことがあるときにまた蜂が刺してくる、というトホホが重なることを言う。
本当に、「なぜこのタイミングで…」ということが起きるのはどうしてだろう。
現在認知症の母・ダウン症の姉・酔っぱらいの父と同居するにしおかすみこさんも、2022年の3月の夜、グキッとやってしまった。そう、ギックリ腰である。にしおかさん連載「ポンコツ一家」19回はそんなトホホの日についてお伝えしている。
前編「認知症の母、ダウン症の姉と暮らすにしおかすみこが、深夜にギックリ腰になった話」では、ギックリ腰でうまく歩けない中、そしてそのタイミングで家のインターホンが壊れ、母が大騒ぎ……というところまでお伝えした。キンコンと鳴らないインターホンをカチャカチャと押しまくる母。「ギックリ腰はどうですかー?」と優しさも忘れないけれど、そのインターホンのあるところに行くことも辛いのだ……。
にしおかさんは、このピンチをどうしのぐのか。
修理はもう少し…
「キンコンも大事だけど、腰と膀胱を先になんとかしたいから、修理はもう少し待って」と言ったら、
「あいわかった」と納得し、10時過ぎ。
母がどこかに電話をかけている。半オクターブ高いよそ行きの声。
「もしもし、あの、はい、玄関のピンポンが壊れまして……はい、まず見積りをお願いします。
それ次第でけっこうですっていう場合があります。はい、ウチにはお金がありませんから。
はい、私は半分ボケていますけど、なにか? 以上で娘にかわります」
かわるんかい!? とんだ前説だ。電話口の先は電気屋さんだ。億劫ではあったがこちらの状況説明をし、どういった選択があるか聞いていると、横で母が内緒話の声でシャウトする。
「ぼったくりかどうか! 躊躇せず警察呼びますって! 凄みをみせな!」と。シーっと言うつもりで人差し指1本を母の顔の前に持っていくと、不思議そうな顔でその指の先を、そっと握った。……トンボじゃあるまいし。母がこの指に止まった。

電話を切り「夕方来てくれるって。多分、老朽化だから、もし取り替えたら3万くらいみたい」と返したら、
「騙されおって!ここまでお膳立てしてやってるのにバカ!」と。