小児科の医師の成田奈緒子さんは、神戸大学医学部の同級生だという山中伸弥教授が最も信用する研究者のひとりだ。ふたりの共著『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』では、おふたりの「育ってきた環境」も明らかにしながら、「レジリエンス=乗り越える力」が現代にとても大切であることも訴えていた。

神戸大学医学部の同級生だった山中伸弥教授と成田奈緒子さん 写真提供/成田奈緒子

そんな成田さんの最新刊『高学歴親という病』は、「レジリエンス」を育てるために、時に障壁となってしまうこともある「親の病」について綴った書籍だ。特に高学歴の親が「子どものため」にと起こす行動が与える深刻な影響を伝えている。本書より何回かにわたり抜粋掲載する第6回は、子どもを信頼できない親の行動やその影響ついてお伝えしていく。

前編では、家事も仕事も完璧な高学歴親の影響で摂食障害になってしまったお子さんについてお伝えする。

 

仕事が忙しくても料理も一切手抜きナシ

完璧主義な高学歴親は、私の肌感ではシャープで傷つきやすい人が多いです。
感受性が強く、不安も察知しやすい。このため、あらかじめネガティブなことを
回避するために、目の前のことに一所懸命に取り組みます。強い溺愛もある。そ
んな姿が、子どもにとっては「心配ばかりして自分を信頼してくれない」メッセ
ージとして伝わるのです。

研究職のお母さんはある日、炊飯器を捨てました。理由を尋ねると「やっぱりお米は土鍋で炊くに限るから」。

土鍋で炊くので炊飯器はいらないと言うのです。3人の子どもは小、中、高校生。まだまだ手のかかる時期、しかも共働き家庭で、ごはんを毎日土鍋で炊くなんて。家事をいかに合理的に回すかを日々考えていた私は驚かされました。
妻同様研究者のお父さんはさらに多忙で、家事育児にはほぼ参加できません。

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お母さんは、ワンオペとまでは言いませんが大変なはずです。そのうえ、出来合いの惣菜なども絶対に買わない主義です。すべて彼女の手作りでした。