小児精神科医で脳科学者の成田奈緒子さんの著書『高学歴親という病』は、子どもに良かれと思ってすることが、実は子どものレジリエンス(困難に向き合う力)を育てる邪魔になってしまうような恐怖を、実例と科学的エビデンスと共に伝える一冊だ。

そこから抜粋紹介する6回目のテーマは「子どもを信頼できない親」。
前編「有機野菜に土鍋ご飯「すべて完璧な高学歴親」の子どもが摂食障害になった理由」では、高学歴で高収入、料理や掃除も手抜きのしない高学歴親が子どもの負担になっている実例や、お弁当を毎日捨ててしまう中高一貫校の子どもを例に、親の負荷によって摂食障害も起こしてしまう事例をご紹介した。後編では高学歴親が子どもを信頼できないあと2つの理由を実例とともにお伝えしていく。

 

小学校5年生の息子が不眠症

小学5年生の息子さんが不眠症のため、夜中1時から3時ぐらいに寝るというお母さんがいました。私たちのところにたどり着くまで、たくさんの病院を回っていました。いわゆるドクターショッピングです。どの病院でも一旦は良くなる。ところが続きません。当時も、ほかの病院で処方された薬が効いて、よく眠れるようにはなっていました。

眠りは深くなってきたのですが、1時から3時の間に寝て朝9時に起きる生活リズムは変わりません。不登校状態が続いていました。
「眠れるようになったんだったら、寝る時刻を少し早めないといけませんよね」
会うたび何度も訴えました。
「まずは23時までに寝かせましょう。そこをやらないとうまくいきません。息子さんのような子どもを何人も診てきました。みんな本当に変わるから、信じて早寝早起きさせてみてください」

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すると、こう言いました。
「先生は、何人も診てるかもしれません、そういう人もたくさんいるかもしれませんが、うちの息子はその唯一の例外なんです。だからできません」