2023年の春分の日は3月21日。この日を境にぐっと暖かくなることも予想される。そしてこの日は、2016年に日本記念日協会によって認定された「日本手ぬぐいの日」なのだという。
手ぬぐいを愛する歌人の鈴掛真さんが、その魅力と幅広い使い方を、コレクションの一部の写真と共にお届けする。
気づけば手ぬぐいが300枚に
約5年前からマイペースに集めていた手ぬぐいのコレクションが、気づけば300枚に達しました。
「手ぬぐいの何がいいの!?」「そんなに集めてどうするの!?」というみなさんの声が聞こえて来るようです。

僕も当初は、まさか自分がこんなにも手ぬぐいに魅了されるとは思ってもみませんでした。
しかし、触れれば触れるほど、手ぬぐいは、デザイン、歴史、染めの技法、使い方などなど、実に奥深いカルチャーであることがわかってきました。
今回は、僕が手ぬぐいを集めるようになったきっかけと、手ぬぐいの多彩な魅力をご紹介します。
きっかけは、決められなかった“旅のお土産”
新型コロナウイルスが蔓延する以前、僕は国内旅行をするたびに、いつも旅先でもどかしい気持ちを抱えていました。
「お土産が決められない!」
旅の思い出に、せっかくだから何かは買って帰りたい。
でも、30代男性の一人暮らしは、特産品やお菓子を買って帰ってもどうせ食べきれない。
かといって、置物は部屋のインテリアに合わないし、ポストカードは使わないままデスクの引き出しの奥に追いやられるだろうし、ご当地キティなんかも集めてないし。
そんなとき、ふと目に触れたのが、旅先の風景が描かれた手ぬぐいでした。

そこには、宮城県の日本三景・松島の海に浮かぶ満月が描かれていました。
夜空と海の青いグラデーション、まん丸に輝く檸檬色の月、暗闇にぼんやりと見えてくる五大堂の屋根と松の木……なんて美しいんだろう。
「手ぬぐいなら、ハンカチみたいに実用性がありそうだし、使うたびに松島の景色を思い出せるのでは?」
そんな気持ちで手に取ったのが、300枚のコレクションの中で僕が最初に買った1枚でした。
初めは、その名の通り“手を拭くもの”だから「ハンカチの代用くらいにしかならないだろう」と、たかをくくっていました。
けれど使い始めてみると、手ぬぐいには想像の何倍もの楽しみと奥深さがありました。