ダイヤモンドが、次世代の半導体素材として注目されています。その理由は、「桁違いの大電力を制御できる可能性」を秘めているから。この大きな電力を制御する必要性は、電気自動車の普及や、電気で動く空飛ぶクルマや飛行機の登場などで年々高まっています。
そこでダイヤモンドの半導体は、現在主流のシリコンに比べて5万倍(理論値)の電力を制御する力があるといいます。省エネの重要性も高まる今、電力損失を大幅に軽減できる性質もあるといい、世界から熱い視線が向けられています。
しかし、その開発の道のりは困難の連続でした。前編では、ダイヤモンドはそもそも絶縁体であり、電気を流す半導体の性質を持たせること自体が難しかった顛末を紹介しました。後編では次の難題、「実用に耐えるサイズの素子を作ることができない」というハードルをどう解決したのか? 実用すれば大容量無線通信から医療機器、宇宙空間にまで広がる夢の半導体素材について続きます。(サイエンスZERO取材班)
前編『「絶縁体であるダイヤモンドが半導体になるはずがない!」…シリコンの5万倍「ケタ違いの大電力量制御の力」を持つ「ダイヤモンド半導体」の可能性』もぜひあわせてお読みください。
ダイヤモンドをもっと大きく! サイズの限界を突破したヒストリー
ダイヤモンドを半導体にする突破口は見えたものの、まだ大きな課題がありました。ダイヤモンド基板の大きさです。長らく研究で使っていた人工ダイヤモンド基板の大きさは、4ミリ角サイズが限界でした。

しかし、半導体製造の工場で使う装置は、通常直径10センチ以上の基板が入るように作られているため、4ミリ角では小さすぎて装置に入れることができません。さらに、基板は大きければ大きいほど、小さなチップにカットして、一度にたくさんのチップを売ることができるため、コストダウンにもなりますが、それもできません。
転機が訪れたのは、7年前の夏のこと。嘉数さんの研究室にある男性が訪ねてきました。「これで半導体をつくってほしい」と差し出されたのは、これまで見てきた2倍の大きさのダイヤモンド基板でした。
「ええ⁉ と本当にびっくりしました。不可能だと思っていたものが目の前に突然現れたという感じでした。」(嘉数さん)