2023.03.22

天皇家につかえた女官が、「皇太子時代の大正天皇」にされて“困ってしまったこと”

天皇との微妙な距離感

あとつぎについての議論などから皇室への関心が高まる昨今。

皇室に「仕える」人たちがどのような働き方をしてきたのかを知っておくことにも、意味があるかもしれません。彼らの働き方、楽しみ、悩み、悲しみなどを知ることは、ひいては皇室という制度について知ることにつながるからです。

そうした「皇室に仕える人たち」について知るのに大いに参考になるのが、山川三千子『女官 明治宮中出仕の記』という書籍です。

著者の山川(旧姓:久世)三千子は、1909(明治42)年に宮中に出仕し、明治天皇の妻である皇后美子(はるこ=昭憲皇太后、1849~1914)に仕えました。いわゆる「皇后宮職」の女官です(正式な役職名は、権掌侍御雇〔ごんしょうじおやとい〕)。

ここでは、同書で紹介されている山川の「悩み」についてみていきます。

山川の場合、大正天皇との微妙な距離感について、困惑することが少なくなかったようです。彼女はこのように当時のことを回顧しています(読みやすいよう改行の位置をあらためています)。

〈いつも皇太子様(大正天皇)ご参内の時には、年若の女官は別の御用の方に周り、年配の人たちがおもてなし申上げるのですが、ある時ちょうど私が詰所におりますと、皇后宮様のご機嫌伺いに、お通りかかりになった殿下が、御自分の持っておいでになった火のついた葉巻煙草を、私の前にお出しになって、「退出するまでお前が持っていておくれ」との仰せ〉

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