2023.05.10
# 火山活動

3.7km以内に近づけない…! 海底火山「福徳岡ノ場」調査のウラ側と、見えてきた最新“噴火研究”の「中身」

小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」は、2021年8月に大噴火を起こした。大量の軽石が噴出し、沖縄をはじめ太平洋側の各地に漂着したことは記憶に新しい。研究者たちは、軽石を採取し、噴火がどのように起こったのかを調査しているが、噴火から1年9ヵ月ほどが経過し、その“輪郭”が浮かび上がってきている。記事前編では海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海域地震火山部門 火山・地球内部研究センターの吉田健太 副主任研究員に、福徳岡ノ場の噴火シナリオの一端についてお話を聞いたが、本稿ではまず現地周辺での航海調査の話から始めよう。(取材・文:小熊みどり)
海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海域地震火山部門 火山・地球内部研究センターの吉田健太 副主任研究員

(前編『“軽石大噴出”の福徳岡ノ場…100万分の1mmの結晶で迫る、噴火メカニズムの謎』はコチラ)

福徳岡ノ場の航海調査はどのように?

噴火から1年後の2022年8月、吉田さんたちの研究チームは、14日間の現地調査に出航した。(調査対象は福徳岡ノ場と西之島)。深海潜水調査船支援母船「よこすか」に、地質学者、地球物理学者、ドローンパイロットなどからなる研究チームの11名と、船員らが乗りこんだ。吉田さんは出発当時の心境、そして航海調査の醍醐味を次のように語る。

「2022年8月はコロナの第7波の只中で、とにかく出航できたことへの安心感がすべてでした。多分ここ最近の航海関係者はそういう気持ちの人がほとんどです。片道3日くらいかかるのですが、2日目くらいになってようやく調査の中身に頭が向いていく感じでした。

海の調査というのは独特の面白さがあります。船上という非日常の空間で過ごすことそれ自体もエキサイティングです。また、船上からは基本的に海面しか見えないのですが、ドレッジなどの調査を行うことで、見えない・泳いでいくことも到底できないような場所の石や映像をとってくることが出来ます。そういった“未知へのワクワク”は、現地でリアルタイムに味わうのが一番旨味があると思っています」

ただ、噴火は収まっているものの、まだ火山活動がみられるので、安全を考慮して2マイル(3.7km)以内には近づけない。ぎりぎりまで近づきつつ、海底に降ろした鉄の籠を引きずり、海底をさらって岩石試料を採取する「ドレッジ調査」を行った。

航海でのドレッジ調査/写真提供 JAMSTEC

北福徳カルデラを構成する岩石を、できるだけまんべんなく採取するため、福徳岡ノ場の北側2ヵ所・西側2ヵ所・南東1ヵ所の全5ヵ所で実施。計6回のドレッジ調査で採取したのは海底に沈んでいる軽石や、海底に流れた溶岩が固まった岩石、泥状の火山灰の塊など500kgほどだ。

十分な量のようにも思えるが、吉田さんによると、採取を終えた時点では、「十分な調査ができたかどうか」は判断がつかなかったという。

「海底火山は深くて暗いところにあってよく見えません。陸上の火山であれば、歩きながらそこがどんな様子か自分の目で見て、岩石もその場でハンマーで叩いて確認しながら調査を進めていくことができますが、海底では視野さえもライトの当たる範囲に限られます。

海底の地形図はあるので見当はつけますが、陸上の火山に比べて海底火山はとにかく情報が少なく、事前にはどこに何があるかわかりません。欲しい試料を狙って取るというよりも、引き揚げてみて初めてわかることや、ドレッジを行う場所の当たり外れに左右される部分が大きいと感じます。ドレッジの籠をうまく引き揚げられず、せっかく取れた試料が籠からこぼれてしまっていることもありました」

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