2023.03.27

製作陣・出演者らが明かす…初代『仮面ライダー』藤岡弘の「オートバイ事故」の真実

『シン・仮面ライダー』(原作・石ノ森章太郎、脚本・監督・庵野秀明)が2023年3月17日(金)より公開された。

映画の公開と前後して、『仮面ライダー』誕生の聖地、東映・生田スタジオに集まった人々のドラマを描く書籍『「仮面」に魅せられた男たち』(牧村康正著、講談社)が刊行される。

本書には多数の関係者の貴重な証言が収録されているが、『シン・仮面ライダー』監督の庵野秀明氏もその一人だ。『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』と『シンシリーズ』を立て続けにヒットさせた庵野氏は、日本映画の現状に危機感を覚えているという。記事前編に続き、書籍より、再編集してお届けする。

『「仮面」に魅せられた男たち』(牧村康正著、講談社)

「大人の鑑賞に堪える一般映画を目指す」

『新世紀エヴァンゲリオン』の制作に当たって庵野が貫いた方針は、周知のとおり、結果的に大人も巻き込む一大ムーブメントにつながった。 

さらに庵野は『シン・ゴジラ』の制作に当たっても考えを変えていない。

2013年6月の企画会議に提出したメモには、次のような方針が盛り込まれていたという。

「『大人の鑑賞に堪える一般映画を目指す』『徹底したリアル・ハード路線、ドキュメンタリズム、子供向けは考慮しない』等々。あ、子供云々に関しては、観客として排除するという事ではなく、子供の感情移入を目的とした子役を配したり、台詞を分かりやすくしたりしない、という事でした」(『ジ・アート・オブ シン・ゴジラ』)

少年仮面ライダー隊やホシノ少年に対する庵野の反応を考えれば、子供のころの記憶はかなりの度合いで大人になっても思考を支配するものだ、と考えていいのかもしれない。

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初代『仮面ライダー』藤岡弘の「オートバイ事故」の真実

『仮面ライダー』第1話の放映開始を翌日にひかえた71年4月2日、藤岡弘(現在の芸名は「藤岡弘、」)のオートバイ事故が起きた。

バイクのアクションシーンで藤岡が電柱に接触し、猛烈な勢いで転倒してしまったのである。

事故現場に駆けつけた制作担当の伊東暉雄はこう語る。

「あの事故は鶴川団地(お化けマンション)の坂道でオートバイが曲がりきれなくて、電柱に斜めに張ってあるワイヤーに足が引っかかっちゃったんだね。あとで確認したら、筋肉がめくれて骨と肉の間の白い部分が見えるくらいの大怪我だった。医者に行っても保険がないから、レントゲンを1枚撮るのに1万円も取られたりしてね。そういう時代だったんです」

1万円というのは、当時、平均的なサラリーマンの月給の5分の1程度に当たる。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大