【独自】「俺が不幸に遭った日やのに!」逮捕状が出た当日、ガーシーが仲間と交わしていた密談のすべて《元朝日新聞記者の爆弾の書『悪党』》
ガーシーこと東谷義和(51歳)=敬称略=のインタビュー原稿をめぐる対応で朝日新聞の所属部署と衝突し、昨年8月末で朝日新聞社を退職した筆者・伊藤喜之は、その後もドバイに引き続き住み、取材を継続させてきた。
1年近くの取材の成果をまとめた『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)が、いよいよ発売された。本書でも触れられなかったエピソードも含め、マスコミでは報じられていない「ガーシー」の実像を伝えていく。《連載最終回》
*
書籍刊行の前日の急展開
日本警察が逮捕状を取った3月16日深夜、私はアラブ首長国連邦(UAE)の某所で渦中のガーシーこと東谷義和(51歳)=敬称略=に接触した。日本メディアは一斉に前日までの「議員」とは一転して東谷を「容疑者」呼称で報道し始めていた。
屋外の場所で、すでに夏に向けて日々暑さを増しているUAEとは言っても、まだ少し肌寒さがあった。ブルーの長袖トレーナーを着て現れた東谷は私を見るや、「あっなんですか、伊藤さん。また、自分の本の宣伝してもらおうと思てるんやろ。こんな俺が不幸に遭った日やのに。もう結構売れてるらしいなー」と声をかけてきた。相当な皮肉まじりだが、笑みがこぼれている。
警視庁が人気俳優らへの暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取得したことには、もうだいぶ開き直っているようで、表情はスッキリしているように見えた。
皮肉や冗談を飛ばしてくる時の東谷は大抵機嫌が悪くない。逮捕状請求の報道が出た直後のツイキャス配信で、東谷は「すごい国やわ、日本は。一生帰国しないことを覚悟できました」と宣言したばかりだった。
ちょうど日本時間では日付が17日となり、拙著『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』の発売日になっていた。なんの因果か、3月15日に議員の除名処分、16日に逮捕状という流れで発売を迎えた。もちろん狙いすました訳ではなく、本来は遅くとも1月までに世に出したいと思っていたのだが、私の執筆が遅く、大幅にズレ込んだ結果だった。
これほど早期の逮捕状は私にとって想定外だったが、リスクは承知の上で、この日ばかりは東谷に会い、面と向かって本の発売を伝えたいと思っていた。本ではあくまで是々非々で東谷について書いたつもりだが、1年近く取材してきた相手に筋は通さないといけない。だが突然、「容疑者」となった東谷と対面し、これまでにない緊張を感じたのも事実だった。