「村山くんがもし藤井六冠と将棋を指すことができたなら……」若くして亡くなった天才棋士・村山聖の師匠が明かした藤井聡太六冠への想い
史上最年少で6冠となった天才棋士・藤井聡太。数年前からネット上では「過去の名棋士の生まれ変わりではないか」と噂されていた。むろん空想の物語に過ぎないのだが、特に挙がるのが、29歳の若さで亡くなった故・村山聖の名前だ。「そんなこと、あるはずがない」とわかっていながらも、村山聖さんの師匠にそのことを尋ねてみると――意外な答えが返ってきた。
前半記事『「藤井聡太六冠はあの天才棋士・村山聖の生まれ変わりではないか」…ネット上の噂を師匠に聞いてみたら返ってきた意外な答え 」』から続けてお届けする。
二人とも、優しいオーラを持っている
「二人とも、同年代よりも大人びていて、どこか達観しているように見える。その反面、時々見せる『幼さ』もよく似ているなと思いましたね」
そう語るのは村山聖さんの師・森信雄さん(71歳)だ。村山は15歳で森さんに弟子入り。師弟の関係を超え、まるで親子のように二人三脚で歩んでいた。

「藤井六冠も村山くんも、ふんわりとしたかわいらしい雰囲気を持っているところも似ていますね。オーラが優しいんですよ。彼らは敵を作らないでしょ?村山くんも、将棋となるときついことを言うのですが、でも普段の彼は優しくて、敵を作らない。藤井六冠もあれだけ強いと『生意気だ』と周囲から疎まれたって、おかしくない。将棋界にだって、嫉妬はありますから。でも、あんなに強くても、盤上を離れれば敵がいない。それは、二人のオーラが優しいからなんですよ。そこも似ているな、と思っています」
ただ、対局のスタイルはまったく違う、と森さんは断言する。
「村山くんは終盤に強かった。終盤からスイッチが入り、ゴールを急ぎ、王将をとらえるというスタイルの戦い方でした。一方、藤井六冠は中盤からスイッチが入る。中盤と終盤の対応がとにかくすごいんです。彼は終盤で違う世界を作っている。序盤から中盤にかけては、マイペースに駒を進めていくのですが、王将をとらえた中盤あたりから一気に押し切り、そこからが早い。そうした強さを持った棋士はこれまではいなかったんですよ。さすがの村山くんでも、この気迫はなかった」
さらに、「村山くんの存在はプラスだったけど、藤井六冠は僕にとってマイナスかもしれない。そこも違うかな」という。
どういうことか。
「藤井六冠が強すぎて、僕の弟子がまったく勝てないんです(苦笑)。もちろん冗談ですよ。彼の存在は将棋界にとってはとてつもなく大きなプラスですから。ただ、師匠としては悩ましいところですよね(笑)。弟子たちも、藤井六冠に刺激を受けて、もっともっと強くなってほしいです」
では、もしも――もしも村山九段と藤井六冠が戦ったら、どうなっていただろうか。