原作漫画と同じく歳の差婚を題材にしたラブストーリーでありながら、作中の端々に料理の作り方が挟まれているWOWOWの連続ドラマ『ながたんと青と -いちかの料理帖-』。料理人であるヒロインの桑乃木いち日を演じる門脇麦も、プライベートでは料理が趣味で「食べる喜び」を仕事の活力に変えている。キノコ狩りや野草探索、釣りが好きなのも、自然と触れ合いながら自分の好奇心や感受性を刺激することが俳優として血の通った芝居をすることにつながるからだ。世代を代表する実力派がガムシャラに働いた20代を経て辿り着いた「持続可能な働き方」とは?
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忙しいと胃の中に虚しさが渦巻いていた20代
ちょっと悲しい出来事があった日でも、美味しいご飯を食べると前向きになる。テレビで絶品レシピが紹介されていると、自分でも作ってみたくなって明日の仕事を頑張るモチベーションが高まることもある。その喜びが失われると少しずつ生活の歯車が狂ってくるし、門脇麦にとっては死活問題だ。
「20代の頃は忙しく働いているとコンビニのお弁当やお惣菜に頼る日が多くて、そうすると自分でも気が付かないうちに、だんだん胃の中に虚しさが渦巻いていくんですよね。そして実家に帰って母親の手料理を食べると、心身ともに生き返ったような気分になり、それまでの自分が『空腹を満たすためだけに胃の中に物体を入れていた』だけだったことに気づくんです。やっぱり心に余裕を持って自分らしく生きていくためには、真心のこもった料理が必要不可欠。『ながたんと青と -いちかの料理帖-』は、それを再確認させてくれるドラマなので、食いしん坊の私としては携わることができて本当に良かったと思っています」
以前は役づくりの一環でストイックな食事摂生を自分に課したこともあったが、そのスタンスではキャリアが短命に終わってしまうことを悟った。
「体を壊してしまったら元も子もないので、例えばメンタルが荒んでいる役でも、健康なコンディションで楽しみながら演じられるようになりたいと思っています。昔は無理に食事制限をすることもありましたが、その影響で今、身体にガタがきていることを実感していますし、それを続けていたら精神的にもどんどん苦しくなって俳優の仕事が嫌になってしまうから。少なくとも、今は食事を犠牲にするような働き方は絶対にしないと決めています」