「ここは代打だ…!」と誰もが思った“絶体絶命寸前”《WBCメキシコ戦9回最後のチャンス》の不調続きだった村上の打席で、「お前が決めろ」と監督と戦友が村上にすべてを託したワケ
「代打はない、お前が決めるんだ」と指差す
3月20日、米・マイアミの「ローンデポ・パーク」。メキシコを相手に1点ビハインドの9回裏、先頭の大谷翔平が初球を右中間に運び、ヘルメットを脱ぎ捨てて激走。二塁上で雄叫びを上げてベンチを鼓舞した。
続いて打席に入ったのは、吉田正尚だ。不調に苦しんだ村上宗隆に代わって4番を務め、今大会13打点を稼ぎ出している。バッテリーも吉田が7回に放った同点3ランの残像が残っているのか、サヨナラのランナーを一塁に歩かせた。

「これは代打だ」―。多くの人がそう思ったことだろう。'06年の第1回WBCで投手コーチとして日本を世界一に導いた武田一浩氏もその一人だ。
「ランナー一、二塁の場面なら、まず同点狙いでバントという選択肢もある。あの場面で転がされるのは、送球ミスが許されないのですごく嫌なんです。だから、小技が得意な選手を代打に送るものだと思っていましたよ」
ところが、一塁へ歩き出した吉田は、「お前が決めるんだ」とばかりに村上を指差す。やはり代打はない。ネット上には心ない中傷が溢れた。