昨シーズンの三冠王として日本全国の期待を背負ってWBCに臨んだ村上宗隆。予選ラウンドでは4番を任されながらも、なかなか結果を出せずにいたが、戦地をフロリダに移し、土壇場での復活を果たした。村上様の不調の要因、そして復活の原動力とは...。
前編記事『「これまでの打席にはなかったようなオーラを感じました」《WBCメキシコ戦9回最後のチャンス》で不調続きだった村上が「村神様」へと変わった「瞬間」』に引き続き紹介する。
確固たる「ストライクゾーン」ゆえの「苦しみ」
そもそも、村上の不調の原因はどこにあったのか。
「大谷の打撃を見てしまったことが大きいです。大谷の規格外の打球を見て、『俺も翔平さんに負けられない』という気持ちが芽生え、力みに繋がった」(現地で取材したスポーツ紙記者)

実際、ダルビッシュ有はキャンプ中、大谷の打球を見た村上の反応に驚かされたと話した。
「みんな大谷の打球を見て感心しているのに、村上くんだけ怒ってるんです。同僚に『大谷には勝てねえよ』と言われても、『でもわかんないですよ』『負けたくねえ』と答えていた。三冠王を獲ってもなお、その気持ちを持ち続けている」
恩師である前出の坂井氏は、国際大会のストライクゾーンの違いも影響したのではと話す。
「彼は選球眼に優れていて、自分の中の確固たるストライクゾーンを持っている。ところが、WBCは普段とゾーンが違い、戸惑っていたのではないでしょうか。ただ、結果が出なくてもベンチで声を出し、守りでは投手を鼓舞していた。結果が出ないからといって、そのままで終わる子じゃないんです」
その通り、村上は「ここしかない」という最高の場面で、劇的な復活を果たしたのである。