血のつながっている家族同士が、血で血を洗う争いを繰り広げることもある相続問題。亡くなる前に遺言を作っておいたとしても、それだけでは安心できません。前編『「兄2人に遺産は1円も渡さない」…58歳妹が母親に書かせた「ヤバい遺言」』に引き続き、実際のケースを元にして考えてみましょう。
【登場人物(年齢は当時のもの、すべて仮名)】
岡崎里子さん(58):3年前に夫と離婚し、父が遺した都内マンションで母と同居
勝子さん(87):里子さんの母で、自宅マンションのほか約1億円の金融資産を保有
幸一さん(63):勝子さんの長男で海外勤務中、家族は妻と2人の子ども
信二さん(61):次男で医師、家族は妻と子ども1人
岡崎里子さん(58):3年前に夫と離婚し、父が遺した都内マンションで母と同居
勝子さん(87):里子さんの母で、自宅マンションのほか約1億円の金融資産を保有
幸一さん(63):勝子さんの長男で海外勤務中、家族は妻と2人の子ども
信二さん(61):次男で医師、家族は妻と子ども1人

「何?遺言だと?」
それから2年ほど経過した令和3年8月のある日、赴任先から帰国した長男・幸一さんと里子さんは、母・勝子さんの世話や介護、そして今後のことで口論になりました。
ケンカそのものものは、これまでも頻繁にありましたが、今回はやや様相が違います。いつも里子さんは兄に言い負かされて悔しい思いをしていたのですが、今回は我慢がならなかったのか、口論の中で思わず次のような言葉を口にしてしまったのです。
「お母さんはもう遺言を作ってるんだから。この先も今までみたいに、すべてお兄ちゃんの思い通りになるなんて思わないことね!」
これを聞いた幸一さんは呆気にとられます。
「何? 遺言だと?」
幸一さんは急に冷静さを取り戻し、それ以上言葉を荒げることもありませんでした。