2023.05.23

「日本人」、じつは「酒が飲めなくなる」ように進化していた…その「驚きのワケ」

生存に有利だった
「生まれ持った遺伝的な体質」は変えられる! 最新科学が示す「日本人が健康になる秘訣」とは?

親から受け継いだ遺伝子は生涯変わらないから、がん、糖尿病、認知症、高血圧、肥満など、さまざまな病気のリスクや体質は「遺伝的なものだし仕方ない」と思っていませんか。しかし、近年のゲノム生物学の進歩によって、生活習慣や環境で遺伝子の働きが変わり、「病気のなりやすさ」も変わることが明らかになってきています。日本人の遺伝子と体質の特徴を捉えていくと、どうすれば遺伝的なリスクを抑え健康に過ごせるかが見えてきます。

*本記事は『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社ブルーバックス』を抜粋・再編集したものです。

酒に弱いほうが生存に有利だった?

一人一人の体の設計図、すなわちゲノムは、わずか0・1%しか違わないと報告されています。けれども、よくみればDNAが1文字だけ異なる一塩基多型(SNP)をはじめ、細かな違いが無数にあって、SNP1個で体質ががらりと変わることもあります。

では、日本人のゲノムにはどんな特徴があり、その特徴はどのように作られてきたのでしょうか。本章で取り上げるのは、第1章で出てきた図1‒4の(1)にあたる、基本的に生涯変わらない部分です。

2020年に興味深い論文が公表されました。日本人17万人のゲノムをもちい、遺伝子変異が起きた時期と、それがどのように伝わってきたのかをコンピューターを駆使して探索したものです。すると、過去1万~2万年のあいだに変異が起きた遺伝子のうち、29個が世代をへるごとにそれぞれ一定の方向に体の特性を変化させてきたことがわかりました。

このなかでもっとも強い動きが「酒に弱くなる方向への進化」でした。飲めるようになるならともかく、飲めなくなるなんて進化といえるのかと思った人がいるかもしれませんが、ここでいう「進化」は日常会話で使う「進化」とは意味が異なります。専門用語では適応進化といい、生存に有利な特性を獲得することを指します。つまり、日本人は酒に弱いほうが生存に有利だったということです。いったい、なぜでしょうか。

稲作は7000~8000年前に、現在の中国を流れる長江が東シナ海にそそぐ地域で始まったと考えられています。じつは、ここは酒に弱い人の割合がもっとも高い地域でもあるのです。図2‒1の2枚の地図をくらべてみてください。

飲んだアルコールは肝臓で分解されてアセトアルデヒドという有害物質に変わりますが、酒に弱い人はアセトアルデヒドを分解する酵素を作る力が低いため、アセトアルデヒドが体に長くたまります。

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