「欧米型の食事」を続けると「乳がん」になりやすくなるという「衝撃の事実」
*本記事は『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(講談社ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

食生活に関する重要な手がかり
米国に移住した日系一世の乳がん発症率は日本で暮らす日本人と変わりませんが、世代を重ねるにつれて発症率が上がり、欧米人と同じように閉経後の乳がんが増えます。この現象が、日本で暮らす日本人にも起きています。乳がんの発症率が上がっただけでなく、なんと、ユダヤ系女性に多く、アジア系に少ないはずの遺伝子変異を持つ人の割合が高くなってきたという指摘があるのです。
こう聞くと怖くなってしまいますが、落ち着いて考えてみましょう。遺伝子に変異があっても、必ずしも乳がんになるわけではありませんし、その逆に、遺伝子にはっきりした異常がなくても乳がんになる人はいくらでもいます。それは、食生活を含む環境要因が、乳がんの発生と増殖に影響を与えるからです。エピジェネティクス変化もあれば、それ以外の形で影響がおよぶこともあります。たとえば、第7章で、塩分の取り過ぎが胃がんの発症率を上げるという話が出てきました。塩が良くないのは胃の粘膜を荒らすからと考えられていましたね。もって生まれた遺伝的素因や、起きてしまった遺伝子変異を正常に戻すのは難しくても、環境要因に気を配ることでがんの発生を左右できる可能性があります。
国立がん研究センターが発表した2016年の全国推計値によると、乳がんの発症率は東京都が突出しています。都市部では食生活を含む生活習慣の欧米化が進んでいることから、日本全体で乳がんの発症率が上がっている原因として、とくに食の欧米化が考えられています。
しかし、食の欧米化と言っても単純ではありません。大腸がんのところで出てきた食物繊維と肉の摂取量の問題、糖尿病のところで見た脂肪と炭水化物の摂取比率の変化、脂質異常症で見た飽和脂肪酸の問題、高血圧で出てきた動物性蛋白質の摂取量、さらには魚や大豆、塩の摂取量など、和食と欧米食はさまざまな点で異なります。
まずは、欧米風の食事で本当に乳がんが増えるか確かめるために、大規模なコホート研究がおこなわれました。日本人女性約5万人について、どんな食事をしているか調べたうえで、その後15年間に、どういう人が乳がんになるか調査したのです。このとき、女性たちの食事内容を、魚や野菜、果物、大豆製品などを多く摂取する「健康型」、肉類、乳製品、パン、コーヒーなどが食卓に並ぶ「欧米型」、ご飯、みそ汁、漬け物などが中心の「伝統型」の3つに分類しました。
すると、欧米型の食事をする頻度が最も高いグループは、最も少ないグループとくらべて、乳がんの発症率が1・3倍になることがわかりました。健康型と伝統型の食事は、食べる回数が増えても乳がんの発症率が変わりませんでした。つまり、和食と健康的な食事を食べている分には心配ないが、欧米食を多く食べると乳がんになりやすくなるということです。