飲食店での迷惑行為動画をネットに上げた一連の炎上事件でついに逮捕者が出た(※1)。こうした迷惑動画のほか、社会的な事件の加害者に対し、単なる批判にとどまらず、社会的抹殺を意図するかのような誹謗中傷や実名などの個人情報をさらし上げる「正義中毒者」の言動が目立つ。
「正義の味方」「怒れる市民」を自称して、執拗に事件の加害者(ときには被害者までも)を叩く「正義中毒」に陥るメカニズムについて解説した前編に続き、行き過ぎた「正義中毒」が法的に断罪される可能性について元少年院の教官で、Youtubeで『犯罪学教室のかなえ先生 V Criminologist』というチャンネルで活動し、いじめや犯罪について解説するほか、講演や執筆活動も行っているVTuberのかなえ先生に聞いた。

(※1)3月8日、名古屋市内の「くら寿司」で備え付けの醤油瓶を舐めるなどの迷惑行為の動画撮影をした住所不定・無職の吉野凌雅容疑者(21歳)や少年3名が、威力業務妨害容疑で愛知県警に逮捕された。
「正統な批判・論評」と主張する一方、加害意識も
本記事前編でかなえ先生に「正義中毒」に陥るメカニズムについて解説してもらった。正義中毒者は、自分の行いを純粋な正義感から生じる正当な行為であると本気で思っているのだろうか?
「2022年に弁護士ドットコムが行った『インターネット上の誹謗中傷に関する実態・意識調査(※2)』では、誹謗中傷を行った動機についての回答で最も多かったのが『正当な批判・論評だと思った』(51.1%)。次いで『イライラする感情の発散』(34.1%)と続いています。この問いに関しての有効回答数が176と少ないことや複数回答が可能なアンケートである点を考慮しても、多くの人が自身の書き込みを悪質だとは思わずに投稿しているようです。
しかしネットで事件の加害者やスキャンダルを起こした有名人を非難するとき『叩く』という言葉を使いますよね。『叩く』という言葉は暴力を意味するものですから、加害の意識は多少なりともあるはず。勝手に実際の被害者の心情に共感(正しく被害者の気持ちを汲み取れていない場合も多い)して、被害者としての仮面を被って加害者への反撃(加害)を正当化している、

突き詰めると、自分が直接、被害を受けたわけでもない相手に対して誹謗中傷を行う根底の理由は、アンケート回答第2位にもある『イライラする感情の発散』にあると感じます。社会における自分の現状に不満を感じている、経済的・社会的に困窮している、といったストレスを、正義者を気取って標的にぶつけて憂さ晴らししている、というのが本当のところでは」(かなえ先生)