子ども世代の環境が荒れている。迷惑動画炎上事件や闇バイト事件、いじめ、性暴力、パパ活にトーヨコキッズ……。そうした事件や社会問題がニュースになるたび、ネットには事を起こした子どもたちを叩いて叩いて叩きまくるコメントやツイートが溢れ返る。子どもの本名や住所、学校や親の勤務先などを調べてさらしたり、口を極めて罵る自称「正義の味方の良識人」たち。こうした「正義中毒」は、いったいどんなメカニズムで起こるのか。元少年院の法務教官であるVTuberのかなえ先生に解説してもらった。

 

「抹殺」「制裁」という言葉を使う「良識人」

先日、飲食店での迷惑行為動画についての記事を書いた。迷惑行為は刑事・民事両面で訴えられる可能性があり、その償いは自分だけでなく家族も巻き込む重大なものになること、直接迷惑行為をしてなくても動画をアップしただけでも罪になる場合もあること、今まで学校で教えてくれなかったこれらの事実を子どもたちにきちんと伝える必要があることなどをまとめた。

取材したのはYoutubeで『犯罪学教室のかなえ先生  V Criminologist』というチャンネルで活動している、元少年院で法務教官をしていた異色の経歴を持つVTuberのかなえ先生。この記事はFRaU webと同時にニュースサイトやSNSでたくさんのコメントいただいた。

元少年院教官でYouTubeで犯罪学について配信しているVtuberの『かなえ先生』

その多くは「いたずら気分で上げた動画がその後、とんでもない結果になることをしっかり子どもに教えた方がいい」というものだったが、中には「こんな迷惑なヤツは社会には不要。実名を晒して社会的に抹殺すべき」「未成年だからと甘やかすな。家族を含めて制裁したほうがいい」などの過激なコメントも少なからずあった。

最近、こうした過激なコメントを連投する「正義中毒」「正義厨」「正義マン」「正義警察」などと呼ばれるネット民の言動に心を痛めたり、なんともいえない不快感を抱いている人は少なくないだろう。正義感が強い良識人・常識人を自称する彼らは、なにか事を起こした当事者に対して、ネット上で度を超した攻撃を加える。時には加害者だけでなく、被害に遭った人に対しても、言いがかりとしか思えない「落ち度(ひとり親だから、派手な服を着て夜中に出歩いていたからなどなど)」を責め立てることもある。「加害者はおろか、被害者としても、自分はこんな事件に巻き込まれるはずがない、つまり自分は正義側なのだから事件の関係者を徹底的に叩いてもよい」という絶対的な自信はいったいどこからくるのだろう、と常々疑問に感じていた。