広瀬すずと櫻井翔がダブル主演でバディを組み、探偵事務所に舞い込む依頼を解決するドラマ「ネメシス」。斬新な謎解きのアプローチや登場人物たちのコミカルな掛け合いで視聴者を魅了した名作が、2021年4月クールに放送された連続ドラマから約2年を経て待望の映画化。持ち味である予測不能な展開が限界レベルまでパワーアップしており、キャストすらも台本を読んで困惑したとか。

10代の頃から俳優として輝かしい実績を残してきた広瀬すずも、本作では一筋縄ではいかない課題に直面することになった様子。『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』の試写に参加した直後の本人に、悲喜こもごもを語ってもらった。

 

アクションはほぼスタントなしで

『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』の脚本は「アンフェア」シリーズなどを執筆した秦建日子が担当。探偵事務所「ネメシス」の天才助手である美神アンナが、ある日を境に悪夢を見るようになり、次第に悪夢の内容と現実の出来事が連鎖していく多重構造の物語になっている。次々と不可解な現象に遭遇するアンナの心情と同じように、広瀬すずも撮影現場で戸惑いを抱いていた。

「すごくスリリングな展開になっているものの、台本を読んだだけでは映像がイメージできなくて、撮影現場で混乱することもありました。特に難しかったのが、CGを駆使したアクションの撮影。私にとって初めての経験でしたし、脳と身体の神経をフル回転させながら試行錯誤して演じました。そして先ほど完成した映像を見たら圧倒されてしまって。これまで見たこともないような刺激的な映画に仕上がって、スクリーンの中で動いている自分を見て『すごいじゃん! 役者っぽい!』なんて思ったりしました(笑)。素晴らしい技術を持つ方々と一緒にものづくりすることができて、本当に光栄でしたね」

アクションシーンでは、敵対する組織の一員を演じた元K-1世界チャンピオンに魔裟斗と対決することに。現役時代の必殺技であった強烈な膝蹴りを受けるシーンもあったが、ほぼスタント無しでこなしたという。

「本番前に魔裟斗さんの過去の試合映像をチェックしていたら、だんだんアドレナリンが出てきて、櫻井翔さんに『倒します!』と宣言したくらい気合いが入っていました。実物の魔裟斗さんは悪役だったこともあって全身から“圧”を放っていたのですが、負けたくないと思って蹴りを受けても目線を外さないようにしたら、褒めていただけました。『目ヂカラ強いね』って(笑)。今回のSFっぽい斬新なアクションシーンは迫力抜群です」

撮影/岡田健

身体能力が高く天才的な頭脳の持ち主でもあるアンナは、これまで広瀬すずが演じてきた役柄とは異なる個性の持ち主。本来の自分とはかけ離れたキャラクターだったからこそ、演じていて刺激をもらうことも多かった。

「私はアンナのように行動力があるわけではないし、正直に言うと、ややこしい問題に首を突っ込みたくない性格です。だからこそ、本能的に身体を動かして逆境に立ち向かっていけるアンナが羨ましいと思う瞬間もありました。彼女みたいに生きることができたら、もっとシンプルに堂々と生きられそうです。私ももう少し“ことなかれ主義”をやめる勇気を持ちたいと思いました」

アンナの父親はゲノム研究の権威であり、連続ドラマでは出生に複雑な事情を抱えていることが明かされる。その要素が役づくりを難しくさせた。

「実例がないような設定だったこともあり、どんな瞬間に心が動くのか? どれぐらい人間らしさを出すべきなのか? なかなか答えが見つからなくて、私の中では大きな挑戦でしたね。人間臭い役柄は多かったものの、アンナのようなキャラクターには出会ったことがなかったですし、俳優としての力量が試されると思いました。ここまでコミカルなシーンが多い作品も初めてでした」