3月31日公開の『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』は、広瀬すずの才能が“全部盛り”の作品かもしれない。複雑なバックボーンを持つ美神アンナの心情に迫るシーンでは持つ前の繊細な演技を見せ、ポンコツ探偵・風真(櫻井翔)との息の合った掛け合いでコメディエンヌとしてのセンスも示し、さらに抜群の運動神経を駆使して本格的なアクションも披露。これだけハードなミッションを当たり前のように乗り越えた(ように見える)なんて、末恐ろしい24歳だ。

さぞかしストイックな役づくりをしているのかと思いきや、むしろ「過度な準備を削ぎ落とす」ことを意識しているという。どんな役柄でも、理屈ではなく本能や直感に任せて演じるタイプ。インタビュー後編では、彼女の人生観にも通じる仕事との向き合い方について、思いの丈を語ってもらった。

インタビュー前編を読む→広瀬すずに“初体験”の試練「アンナは俳優としての力量を試されているような役」

 

最初に抱いた感情を素直に表現

天才的な頭脳と行動力を武器に、探偵事務所ネメシスに寄せられた依頼を解決に導く三神アンナ。『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』でも、のびのびとした彼女の魅力を体現するために広瀬すずは「自由であること」を大事にしていた。

「私が考え込んでしまうと自由奔放なアンナらしさが失われてしまうと思っていたので、連続ドラマと同じく現場で生まれた感情に任せて自由に演じさせていただきました。周囲の方々には入念に準備しているように見えるらしいのですが、もともと今回に限らず『セリフだけ覚えておけばいい』ぐらいの感覚で現場に行きます。頭の中で何度もシュミレーションしていると、本番でセリフを発することに新鮮味がなくなり、楽しくなくなってしまうので……」

アレコレと考えすぎることを避けるためにも、基本的にセリフを覚えるのは前日の夜と決めている。これは10 代の頃から変わらないスタンス。

「先々の撮影スケジュールをいただいても、チェックするのは終わる時間ぐらいですかね(笑)。もちろん物語の全体像を把握していないわけではないですが、これまでは台本を読んで、リハーサルをして最初に抱いた感情を素直に表現することで上手くいくことが多かったんです。私の場合は理屈で考えて作り込みすぎると、そこから抜け出せなくなって、柔軟な演技ができなくなってしまいます。気合を入れて作り込んで行ったとしても、現場で急に方向転換することになったりすると、動揺が顔に出てしまうんです」

撮影/岡田健

予定調和ではなく、リアルで説得力のある演技を追求したい。そのためにも、本番中はカメラの存在を忘れるくらい集中することを目指している。劇中でも長回しのシーンではゾーンに入り込んだような鬼気迫る演技を見せた。

「今回、アンナは仲間を失うような危機に何度も直面して、どんどん精神的に追い込まれていきます。私としては、そういうシリアスなシーンこそワンカットで撮っていただくと、集中力が途切れずに感情を出し切ることができるんです。ただ、ネメシスならではのコミカルな掛け合いのシーンではセリフのテンポやタイミングを計算する大切さも学びました。カメラの存在を意識から外すと、ヘラヘラと笑いすぎてしまうので。バランスが難しいのですが、新鮮な気持ちで演技を楽しみたいというスタンスは昔から変わりません」

撮影/岡田健